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文献詳細

雑誌文献

胃と腸40巻2号

2005年02月発行

文献概要

症例

潰瘍性大腸炎の長期経過中に発見された小さなIIc+IIa様進行大腸癌の1例

著者: 大岩俊夫1 大岩久夫1 八尾隆史2 兼城三由紀2

所属機関: 1大岩外科胃腸科 2九州大学大学院医学研究院形態機能病理

ページ範囲:P.251 - P.255

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要旨 63歳,女性.潰瘍性大腸炎発症後2年で全大腸型へと進展し,SalazopyrinとPredonine内服と水溶性Predonine注腸療法を行い,緩解増悪を繰り返してきた.右側結腸の活動性は低下してきたが,S状結腸は伸展不良となり鉛管状を呈し炎症性ポリープを認めるようになった.発症15年目,S状結腸にIIc+IIa様病変を認め生検で癌が検出され,左側結腸切除が施行された.切除大腸の組織学的検索で,IIc+IIa様病変は低分化腺癌主体の深達度mpの進行癌であり,他の部位には癌・dysplasiaは認めなかった.手術2年前の注腸X線写真を再検討すると同部位にごく軽度の伸展不良を認め,この癌の初期像が描出されているものと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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