胃と腸40巻4号

2005年04月発行

特集 消化管の出血性疾患2005

疾患各論

25.肛門疾患痔核，癌，その他

著者： 松田圭二¹ 安達実樹¹ 大見琢磨 荒井武和¹ 矢後尋志¹ 白京訓¹ 野澤慶次郎¹ 味村俊樹¹ 小平進¹ 冲永功太¹

所属機関： ¹帝京大学外科

ページ範囲：P.677 - P.682

文献概要

要旨　肛門部の主な出血性疾患である，内痔核，裂肛，扁平上皮癌，悪性黒色腫，類基底細胞癌について述べた．内痔核の出血は鮮紅色で，多くの場合排便時のみ出血する．鑑別疾患としては，直腸脱，直腸粘膜脱症候群，直腸腫瘍などがある．裂肛は疼痛が主で，出血は拭紙につく程度の少量の鮮血である．扁平上皮癌は，放射線感受性が高いため放射線治療が第一選択である．悪性黒色腫は血行性遠隔転移が多いことから予後は悪い．類基底細胞癌は放射線化学療法が有効である．肛門腫瘍を正確に診断するためには，臨床の現場で頻回に肛門鏡検査を行い，普段から多くの痔核病変や正常肛門を観察しておくことが肝要である．

参考文献

1）進藤勝久．稀な組織型の肛門腫瘍．外科治療 82 : 861-864, 2000

2）松田圭二，樋渡信夫，安達実樹，他．日本における肛門部腫瘍の集計．胃と腸 38 : 1303-1309, 2003

3）栗原浩幸，金井忠男，山腰英紀，他．内痔核の鑑別診断と治療方針．消化器外科 25 : 1263-1271, 2002

4）岩垂純一．基本的な直腸肛門部病変の外来診察．胃と腸 38 : 1225-1237, 2003

5）Sischy B, Doggett RLS, Krall JM, et al. Definitive irradiation and chemotherapy for radiosensitization in management of anal carcinoma : Interim report on radiation therapy oncology group study No.8314. J Natl Cancer Inst 81 : 850-856, 1989

6）赤木由人，白水和雄，緒方裕．肛門部の悪性腫瘍とその治療．外科治療 89 : 667-673, 2003

7）松田圭二，安達実樹，小平進，他．直腸肛門部の巨大 basaloid carcinoma の1例． 胃と腸 38 : 1326-1331, 2003