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文献詳細

雑誌文献

胃と腸40巻5号

2005年04月発行

文献概要

今月の主題 切開・剥離法(ESD)時代の胃癌術前診断 主題

切開・剥離法(ESD)に必要な胃癌術前診断―X線診断

著者: 細川治1 海崎泰治2 森下実1 服部昌和1 道傳研司1 林裕之1 大田浩司1 奥田俊之1 福田和則3 辻光昭4

所属機関: 1福井県立病院外科 2福井県立病院病理 3武生市福田胃腸科外科 4福井市辻医院

ページ範囲:P.743 - P.752

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要旨 切開・剥離法では従来の適応を超える大きさの胃粘膜内癌(m癌)を十分な断端距離を有して切除することができ,粘膜下層要素(sm要素)が存在する場合も粘膜領域の切除は可能となる.本法を導入することにより,分化型早期胃癌でどの程度に適応拡大が図れるかを,5cm以下の外科的切除早期胃癌材料1,407例を用いて検討した.従来からの適応と合致する症例は32.9%であり,sm要素を持たない5cm以下の癌巣に適応拡大すると11.5%(隆起型m癌2.1~5cm:6.9%,混合型m癌2.1~5cm:1.3%,陥凹型m癌Ul(-)2.1~5cm:3.3%)の増加に結びつくと予想された.さらに,sm要素があるが固有筋層に及んでいないm癌(陥凹型m癌Ul-II,3cm以下)を加えた場合は一挙に13.2%の適応拡大が見込まれることとなる.切開・剥離法におけるX線診断の役割としては,浸潤範囲診断においては表層拡大型病巣を除外することであり,深達度診断では従来のEMR適応・非適応の診断に加えて,癌巣内潰瘍を伴う陥凹型胃癌の深達度および潰瘍瘢痕の深さの診断に重要な役割を果たすことが示唆された.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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