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文献詳細

雑誌文献

胃と腸40巻6号

2005年05月発行

今月の主題 Crohn病の初期病変―診断と長期経過

序説

Crohn病の初期病変―診断と長期経過

著者: 飯田三雄1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学

ページ範囲:P.855 - P.857

文献概要

 一般的にCrohn病の初期病変はアフタ様病変と考えられている.その根拠として,縦走潰瘍や敷石像などの典型病変の口側または肛門側に高率にアフタ様病変が認められ,その一部は典型像に進展しうることが挙げられてきた.また,術中内視鏡で異常なしとされた腸切除例の腸管吻合部に術後比較的短期間のうちにアフタ様病変が高頻度に新生し,その多くが経年的に典型像へと進展する1)こともその根拠となっている.さらに,近年,典型病変を欠きアフタ様病変のみから成るCrohn病の存在が明らかとなり,一部の症例では経過中に典型像に進展しうることが報告された.すなわち,八尾ら2)は,アフタ様病変のみから成るCrohn病21例と典型的Crohn病166例の臨床像を比較した結果,①腹痛,下痢,発熱,体重減少などの臨床症状が前者で有意に少なかったこと,②活動指数(CDAI,IOIBD)や炎症所見(血沈,CRP,血小板数)が前者で有意に低値であったこと,③栄養状態を表す指標(比体重,血清アルブミン,総コレステロール)が前者で有意に高値であったこと,④前者の6例が典型的Crohn病に進展したこと,などから,前者は後者の初期病変と考えられると報告した.また,筆者らの施設で経験した10例の検討でも,5例が典型像への進展を認めた3).これらの事実から,アフタ様病変をCrohn病の初期病変とする考えは疑う余地のないものとされている.

参考文献

1)八尾恒良,桜井俊弘,有馬純孝,他.X線・内視鏡所見からみたCrohn病の術後経過.胃と腸 26 : 627-642, 1991
2)八尾恒良,桜井俊弘,松井敏幸,他.アフタ様病変のみのCrohn病―典型的Crohn病との差異とその経過.胃と腸 29 : 507-519, 1994
3)Matsumoto T, Iida M, Nakamura S, et al. Crohn's disease of aphthous type : serial changes in intestinal lesions. Br J Radiol 73 : 1046-1051, 2000
4)日本消化器病学会クローン病検討委員会.クローン病の診断基準(案).日消誌 73 : 1467-1472, 1976
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9)飯田三雄,檜沢一興,青柳邦彦,他.大腸アフタ様病変のX線学的鑑別診断―アフタ様病変のみから成るCrohn病と他疾患との鑑別を中心に. 胃と腸 28 : 397-410, 1993
10)飯田三雄,川﨑厚,興梠憲男,他.Crohn病の長期経過―初診時X線所見からみた合併症出現の予測.胃と腸 26 : 613-626, 1991

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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