文献詳細
今月の主題 Crohn病の初期病変―診断と長期経過
序説
文献概要
一般的にCrohn病の初期病変はアフタ様病変と考えられている.その根拠として,縦走潰瘍や敷石像などの典型病変の口側または肛門側に高率にアフタ様病変が認められ,その一部は典型像に進展しうることが挙げられてきた.また,術中内視鏡で異常なしとされた腸切除例の腸管吻合部に術後比較的短期間のうちにアフタ様病変が高頻度に新生し,その多くが経年的に典型像へと進展する1)こともその根拠となっている.さらに,近年,典型病変を欠きアフタ様病変のみから成るCrohn病の存在が明らかとなり,一部の症例では経過中に典型像に進展しうることが報告された.すなわち,八尾ら2)は,アフタ様病変のみから成るCrohn病21例と典型的Crohn病166例の臨床像を比較した結果,①腹痛,下痢,発熱,体重減少などの臨床症状が前者で有意に少なかったこと,②活動指数(CDAI,IOIBD)や炎症所見(血沈,CRP,血小板数)が前者で有意に低値であったこと,③栄養状態を表す指標(比体重,血清アルブミン,総コレステロール)が前者で有意に高値であったこと,④前者の6例が典型的Crohn病に進展したこと,などから,前者は後者の初期病変と考えられると報告した.また,筆者らの施設で経験した10例の検討でも,5例が典型像への進展を認めた3).これらの事実から,アフタ様病変をCrohn病の初期病変とする考えは疑う余地のないものとされている.
参考文献
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