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文献詳細

雑誌文献

胃と腸40巻7号

2005年06月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

悪性リンパ腫との鑑別が困難であった胃内分泌細胞癌の1例

著者: 久多良徳彦1 折居正之1 菅井有2 照井虎彦1 遠藤昌樹1 千葉俊美1 猪股正秋1 鈴木一幸1 高金明典3 上杉憲幸2 中村眞一2 澤田哲伸4

所属機関: 1岩手医科大学医学部第1内科 2岩手医科大学医学部臨床病理 3岩手医科大学医学部第1外科 4澤田内科医院

ページ範囲:P.1059 - P.1066

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要旨 症例は66歳の男性で,主訴はタール便である.胃X線および内視鏡検査で,胃体上部から前庭部の小彎側を中心に大きさ11×6cmの2型の腫瘍を認めた.腫瘍は部分的に粘膜下腫瘍様の形態を示し,胃壁の伸展性も保持されていた.生検組織像では,悪性リンパ腫との鑑別が困難であったが,免疫組織化学染色により胃内分泌細胞癌が示唆さたため胃全摘術を施行した.切除標本の病理組織所見では,N/C比が高く,核のクロマチン分布が均一な腫瘍細胞の増殖を認めた.標本内には明らかな腺癌成分は認められなかった.癌細胞の浸潤は漿膜に及んでおり,1群リンパ節に転移を認めた.免疫組織化学染色では,Grimelius,NSE,NCAM,chromogranin Aがいずれも陽性であり,胃原発の内分泌細胞癌と診断した.本例は,悪性リンパ腫との鑑別が画像診断上および病理組織学的にも困難であったが,免疫組織化学染色がその鑑別に有用であった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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