免疫異常における消化管腫瘍の臨床像と内視鏡診断―特にAIDS関連消化管悪性腫瘍の拡大内視鏡による早期診断について
著者:
為我井芳郎
,
芹澤浩子
,
永田尚義
,
今村雅俊
,
正木尚彦
,
上村直実
,
斉藤澄
,
藤井丈史
,
上田晃弘
,
田沼順子
,
源河いくみ
,
照屋勝治
,
立川夏夫
,
菊地嘉
,
岡慎一
,
木村哲
ページ範囲:P.1117 - P.1133
要旨 免疫不全状態として先天的免疫異常,臓器移植などに伴った医原性免疫異常,HIV感染,その他のウイルス感染,血液・リンパ系の腫瘍性疾患などが挙げられる。特に、HIV感染によるAIDS患者は全世界的に増加し、またAIDS関連の消化管悪性腫瘍は高頻度でみられ,その早期診断が重要な今日的課題となっている.今回,上部消化管内視鏡120例(男111例,女9例,平均40.2歳),大腸内視鏡63例(男59例,女4例,平均39.8歳)の計154例でKaposi肉腫11例,悪性リンパ腫7例,大腸癌3例を経験し,内視鏡的特徴像と鑑別診断について検討した.その結果,Kaposi肉腫は鮮やかな赤みを伴う血豆状,うろこ状を呈し,悪性リンパ腫は正常から軽度の発赤を示した.また,両者は種々の形態を示し,悪性リンパ腫でより大きな潰瘍型,隆起型を示す例がみられた.Kaposi肉腫の微小病変の拡大内視鏡観察では,病変は小さな平坦・隆起で色調は鮮やかな発赤を呈し,食道では血管網の途絶とIPCLの不明瞭化,胃では微小表面模様の腫大,小腸では腫大した絨毛,そして大腸では疎なI型pitを認め,またびらん部分で模様の消失がみられ,発赤は明瞭な境界を有した.悪性リンパ腫では同様の微細表面模様を認めたが色調は正常から淡い発赤で,発赤の境界は不明瞭であった.また,大腸癌を3例4病変認めたが腫瘍性pitから明瞭に鑑別された.一方,AIDS関連の感染症としてカンジダ真菌症,CMV,アメーバ,HSV,MACなどが経験されたが,びらん・潰瘍および隆起部分の性状を通常・拡大内視鏡観察により詳細に検討することで悪性腫瘍を含めた鑑別診断が可能であった.以上から,HIV感染者は既に悪性腫瘍のhigh risk groupという認識で,その早期診断を目的としたスクリーニングとして内視鏡診断学を位置づける必要があると思われた.