中・下咽頭癌の通常内視鏡観察
著者:
門馬久美子
,
吉田操
,
川田研郎
,
遠藤純子
,
荒川丈夫
,
江頭秀人
,
江川直人
,
加藤剛
,
出江洋介
,
笹村佳美
,
三橋敏雄
,
河内洋
,
根本哲生
ページ範囲:P.1239 - P.1254
要旨 内視鏡観察は,硬口蓋から中咽頭,下咽頭へと順に行うが,伸展が十分できない輪状後部(咽頭・食道接合部)は観察困難である.中・下咽頭癌発見のため拾い上げる所見は,正常血管網の消失,粘膜の色調変化,粗そうな粘膜や微細な凹凸,陥凹や隆起などである.通常観察に,narrow band imaging(NBI)や拡大内視鏡を併用すれば,より容易に中・下咽頭癌が発見,診断できる.早期の中・下咽頭癌28例35病変(中咽頭癌5,下咽頭癌30)は,全例男性,96.4%は通常内視鏡検査にて発見された.同時性癌は5例(17.9%),異時性癌は2例(7.1%)であった.背景因子として,合併した食道癌は多発例が多く,食道内ヨード不染の個数では10個以上が17例(60.7%)であった.食道癌多発例と食道内ヨード不染多発例は,中・下咽頭癌の高危険群であった.EMR施行18例22病変の内視鏡所見は,血管網の消失17病変,粘膜の発赤13,微細な凹凸13,上皮内の血管増生12,丈の低い隆起9(赤い隆起5,白い隆起4),浅い陥凹3,丈の高い隆起1であった.内視鏡病型は,0-I 1病変(4.5%),0-IIa1 1(50%),0-IIa+IIc 1(4.5%),0-IIb 5(22.8%),0-IIc 3(13.7%),2型類似1(4.5%)と,隆起性病変が多かった.深達度は,上皮内癌14病変(63.6%),上皮下浸潤癌8(36.4%)であり,上皮下浸潤8病変中2病変(25%)で脈管侵襲陽性であった.