文献詳細
文献概要
今月の主題 表在性の中・下咽頭癌 主題
中・下咽頭癌の疫学・臨床統計
著者: 吉野邦俊1
所属機関: 1大阪府立成人病センター耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.1229 - P.1238
文献購入ページに移動要旨 中・下咽頭癌は食道癌に比べて頻度は少ないが,最近は徐々に増加しつつある.大阪府がん登録のデータによる最近3年間(1999~2001年)の男性の年齢調整罹患率(人口10万対,1985年日本モデル人口)は,下咽頭癌1.9,中咽頭癌1.1であり,35年前より約6倍増加している.大部分は扁平上皮癌であり,明らかに過度の喫煙,飲酒が発癌危険因子となっている.これらの癌では約25%に多重癌がみられ,その部位は頭頸部,食道,胃,肺の4つで82%を占めており,なかでも食道癌が37%と最も多い.このことは上部気道消化管を重点的に検索する必要性を示唆している.今後,関連診療科の協力の必要性がますます高くなるであろう.
参考文献
1)厚生労働省がん研究助成金「地域がん登録」研究班.日本のがん罹患率と推移.大島明,黒石哲夫,田島和雄(編).がん・統計白書―罹患/死亡/予後―2004.篠原出版,pp 97-160, 2004
2)吉野邦俊.頭頸部癌は増えているか―頭頸部癌の疫学.耳喉頭頸 76 : 345-350, 2004
3)厚生労働省大臣官房統計情報部.平成14年人口動態統計上巻. 厚生統計協会,pp 286-289,pp 298-299, 2004
4)宮原裕,鶴田至宏,馬谷克則,他.中咽頭がんの病態についての研究.癌の臨 33 : 637-641, 1987
5)荻野敏,佐藤武男.輪状軟骨後部癌の発癌要因に関する臨床的考察.耳鼻臨床 69 : 1179-1186, 1976
6)咽頭.Sobin LH, Wittekind CH(編),日本TNM分類委員会(訳).UICC TNM悪性腫瘍の分類,5版.金原出版,pp 25-32, 1998
7)吉野邦俊,佐藤武男,藤井隆.口・咽頭癌における多重癌.口咽科 12 : 337-347, 2000
掲載誌情報