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文献詳細

雑誌文献

胃と腸40巻9号

2005年08月発行

文献概要

今月の主題 表在性の中・下咽頭癌 主題

表在性の中・下咽頭癌の治療

著者: 井上晴洋1 佐藤嘉髙1 乾正幸1 菅谷聡1 小鷹紀子1 里館均1 工藤進英1

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター

ページ範囲:P.1270 - P.1276

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要旨 中・下咽頭における扁平上皮癌の拡大内視鏡観察所見が解明されるにつれて,多数の表在性の中・下咽頭癌が発見されるようになってきた.通常内視鏡で発赤部を見い出し(NBIでは,発赤調の病変部はbrown spotとして認識される),拡大内視鏡所見IPCLパターン分類でtype IVやV-1を認めれば,上皮内癌を含めた腫瘍性病変の可能性が高まる.「頭頸部癌取扱い規約」の0期(TisN0M0)の病変を認めれば,完全生検の意味でもEMRを施行している.広範囲のEMRも技術的に可能であるが,EMRの影響が喉頭に及ぶと考えた場合には,気道の予防的確保の意味でも,一時的な気管内挿管や気管切開術が必要である.これまでに30例に中・下咽頭腫瘍性病変の内視鏡的切除術を行っているが,特記すべき合併症を認めていない.スクリーニング内視鏡において,より早期の癌,さらには微小癌を見つけ出すことは,治療侵襲の軽減,ひいては患者利益に直結するものと考えられる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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