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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻10号

2006年09月発行

今月の主題 ・sm癌の最新の診断と治療戦略

序説

食道m3・sm癌の最新の診断と治療戦略

著者: 幕内博康1

所属機関: 1東海大学医学部外科

ページ範囲:P.1357 - P.1358

文献概要

はじめに

 食道癌では,粘膜癌(m癌)と粘膜下層癌(sm癌)とでは著しく病態が異なる.m癌ではリンパ節転移を有する症例は極めて少ないが,sm癌となると急激にリンパ節転移を有するものが増加する.深達度亜分類別に検討すると,粘膜上皮や粘膜固有層にとどまるm1・m2癌ではまずリンパ節転移を有するものはない.粘膜筋板や粘膜下層に浸潤するm3・sm1癌では10~15%の症例にリンパ節転移が認められ,粘膜下層中層以深のsm2・sm3癌では40~50%の症例がリンパ節転移を有している.すなわち,m1・m2癌,m3・sm1癌,sm2・sm3癌の3群では治療方針を変える必要がある1).すなわち,リンパ節転移診断が極めて重要であるが,最新の診断とは何であろうか.どれほどの進歩を示しているのか興味のあるところである.

 さて,その診断に基づいて治療戦略が立てられ,治療が行われる.治療の主体は外科的根治術であると思われるが,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)に加えて内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)が開発された2).EMR・ESD後に化学療法や放射線療法,あるいは化学・放射線療法(chemoradiotherapy ; CRT)を加える向きも少なくないが効果はどうか.sentinel nodeの概念は生きてくるのか.切除可能食道癌に対してCRTだけで,すなわちsalvage surgeryなど外科医の力に頼らずどのくらいの患者を治癒させうるのか,などが明らかにされることを期待する.

参考文献

1) 幕内博康,島田英雄,千野修,他.食道表在癌の最新の治療戦略.消化器内視鏡 15 : 350-355, 2003
2) 小山恒男,友利彰寿,堀田欣一,他.早期癌に対する内視鏡治療―食道 : ESD.胃と腸 41 : 491-497, 2006
癌の治療成績― EMR と手術の長期予後.胃と腸 37 : 53-63, 2002
4) 有馬美和子,多田正弘.食道・縦隔疾患に対する超音波内視鏡下穿刺生検法の適応と成績.Gastroenterol Endosc 46 : 1094-1101, 2004
5) 井上晴洋,加賀まこと,菅谷聡,他.食道表在癌深達度診断の進歩―拡大内視鏡 vs EUS : 拡大内視鏡の立場から.胃と腸 41 : 197-205, 2006
6) 幕内博康.胸部食道癌切除術.手術 60 : 719-725, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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