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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻10号

2006年09月発行

今月の主題 ・sm癌の最新の診断と治療戦略

主題

食道m3・sm癌の最新の診断―内視鏡診断の立場から

著者: 井上晴洋1 細谷寿久1 加賀まこと1 菅谷聡1 佐藤嘉高1 里館均1 長山裕之1 浜谷茂治2 工藤進英1

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター 2昭和大学横浜市北部病院病理部

ページ範囲:P.1374 - P.1384

文献概要

要旨 m3・sm1癌は,その治療においてEMR/ESDの相対適応病変となるために,その深達度診断は極めて重要である.m3・sm1癌の診断においては,拡大内視鏡所見は,通常の内視鏡観察所見に加えて,特徴的な所見を見い出すことができる.IPCLパターン分類では,m3・sm1癌に相当する所見はIPCL type V-3である.m2の変化(IPCL type V-2)がさらに深部に及び,隣同士のIPCLが手をつなぐような所見(IPCL type V-3a)を認める場合と,粘膜表層を横に走行する血管(IPCL type V-3b)を認める場合がある.これらの所見はm1やm2の癌では観察されることがなく,m3・sm1に特徴的な所見である.また,IPCL type V-3aと IPCL type V-3bの両方の所見を同時に認めることがあり,IPCL type V-3abとしている.いずれも,m3・sm1癌の典型的な拡大内視鏡像である.なお癌が上皮下に浸潤する場合は,拡大内視鏡の所見のみでの読影では浅読みしてしまうことがあり,その場合は,これまでの通常の内視鏡所見や超音波内視鏡での深達度診断が参考となる.sm2以深の癌では,IPCL type VNの所見を認め,外科手術〔鏡視下食道切除・再建術(HALS併用)〕を中心とした治療を展開している.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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