胃と腸41巻10号

2006年09月発行

今月の主題 ・sm癌の最新の診断と治療戦略

主題

治療成績からみた食道m₃・sm癌の治療方針―外科切除例の治療成績：3領域郭清の立場から

著者： 島田英雄¹ 幕内博康¹ 千野修¹ 西隆之¹ 木勢佳史¹ 葉梨智子¹ 剱持孝弘¹ 山本壮一郎¹ 原正¹ 加藤優子²

所属機関： ¹東海大学医学部消化器外科 ²東海大学医学部病理

ページ範囲：P.1429 - P.1440

文献概要

要旨　食道m₃・sm癌において，特にリンパ節転移の有無は，選択すべき治療法，また治療成績にも影響する重要な因子である．胸部食道癌では，頸，胸，腹部の3領域へリンパ節転移する可能性が高く，初発転移の段階から同様の傾向が認められた．食道m₃・sm₁癌では，多様性を持った治療法の選択が可能であり，適切な症例の選択により内視鏡治療（5年生存率91.4％）と外科手術（5年生存率93.0％）で同等の成績が得られている．sm_2・3症例では，リンパ節転移頻度，転移領域からみても，3領域リンパ節郭清を伴う外科手術が標準治療と考えており，over allでのsm₂，sm₃の5年生存率はそれぞれ65.8％，63.3％であった．

参考文献

1) Makuuchi H. Endoscopic mucosal resection for early esophageal cancer ― indication and techniques. Dig Endosc 8 : 175-179, 1996

2) 日本食道疾患研究会(編)．食道癌治療ガイドライン．金原出版，2002

3) 小玉正智，掛川暉夫．食道表在癌の治療―第 49 回食道疾患研究会，食道表在癌アンケート集計報告．日外会誌 97 : 683-690, 1996

4) 島田英雄，千野修，田仲曜，他．胸部食道癌に対する 3 領域リンパ節郭清例の転移状況からみた頸部，上縦隔郭清の意義．日消外会誌 32 : 2469-2473, 1999

癌の治療成績― EMR と手術の長期予後．胃と腸 37 : 53-63, 2002

6) 島田英雄，幕内博康，千野修，他．食道 sm 癌に対する食道温存治療の可能性―内視鏡の立場からの検討．胃と腸 37 : 1273-1284, 2002

7) 幕内博康，島田英雄，千野修，他．東海大学の手術方針と手技―頸胸腹部 3 領域リンパ節郭清術．手術 57 : 431-436, 2003

8) 日本食道疾患研究会(編)．Comprehensive Registry of Esophageal caner in Japan，3 版．日本食道疾患研究会，2002

9) 梶山美明，鶴丸昌彦．食道 sm 癌の治療―手術 VS 放射線化学療法．外科 67 : 518-523, 2005

10) 大津敦，武藤学，目良清美，他．食道癌治療の controversy ―内科の立場から．癌と化療 30 : 1230-1237, 2003

11) Kato H, Udagawa H, Togo N, et al. A phase II trial of chemo-radiotherapy in patient with stage I esophageal squamous cell carcinoma: Japan Clinical Oncology Group study(JCOG9708). Proc Am Soc Clin Oncol 22 : 286, 2003

12) 幕内博康，島田英雄，千野修．画像診断と全身状態からみた治療方針決定．幕内博康(編)．消化器病セミナー 99．食道癌治療の最前線．へるす出版，pp 1-12, 2005