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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻11号

2006年10月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点 主題

早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点―私はこう考える:内科の立場から

著者: 田中信治1 岡志郎1 金子巌1

所属機関: 1広島大学病院光学医療診療部

ページ範囲:P.1543 - P.1546

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はじめに

 早期胃癌に対するESD(endoscopic submucosal dissection)1)が急速に発展し,もはや早期胃癌の標準的治療になりつつあると言っても過言ではなく,2006年4月から保険適応となったことは非常に意義深いことである.ESDでは,従来の絶対適応病変はもとより,さらに大きな病変や潰瘍(UL)を伴う相対適応病変も完全一括切除が可能である2)~4).これにより早期胃癌の完全局所根治と切除病変の詳細な病理組織学的診断が可能となり,正確な根治度判定を行うことができる.ESD標本が根治基準を満たさない場合は,当然,リンパ節郭清を伴う追加手術を行うことになる.

 一方,腹腔鏡下手術の進歩もめざましく,従来の開腹手術と比べて,低侵襲な手技で“全層切除+1群所属リンパ節郭清”が可能となっている5)6).その結果,転移の可能性が極めて低い早期胃癌(M癌)に対して積極的に行われている.腹腔鏡下手術のESDに対する優位性は,リンパ節郭清ができるということであるが,全身麻酔を行う必要があるなど,やはり,ESDと比較するとその侵襲は大きい.ESDで大きな早期胃癌も完全一括切除できるようになった現在,われわれは,リンパ節郭清や全層切除の不要な早期胃癌には腹腔鏡下手術の必要性はないと考えている.

参考文献

1) Ono H, Kondo H, Gotoda T, et al. Endoscopic mucosal resection for treatment of early gastric cancer. Gut 48 : 225-229, 2001
2) 日本胃癌学会(編).胃癌治療ガイドライン(医師用),2 版.金原出版,2004
3) 小野裕之,乾哲也,蓮池典明,他.早期胃癌に対する ESD 切除成績と切除困難例の特徴.胃と腸 41 : 37-44, 2006
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5) 古川俊治,大谷吉秀,久保田哲朗,他.早期胃癌に対する腹腔鏡下手術.日本臨牀 (Suppl)59 : 303-307, 2001
6) 井上晴洋,佐藤嘉髙,菅谷聡,他.早期胃癌に対する ESD の評価―私はこう考える.胃と腸 41 : 114-116, 2006
7) 笹子三津留,長南明道,浜田勉,他.胃癌治療ガイドラインをめぐって(座談会).胃と腸 38 : 107-125, 2003
8) 岩下明徳,山田豊,有田正秀,他.病理学的にみた早期胃癌内視鏡切除の適応条件.胃と腸 26 : 265-274, 1991
9) 飯塚敏郎,矢作直久,大塚隆文,他.安全性・経済性からみた早期胃癌に対する ESD―医療経済とトレーニング法.胃と腸 41 : 99-103, 2006
10) 岡志郎,田中信治,青木理恵,他.大腸 sm 癌の転移予測における分子病理学の臨床応用.早期大腸癌 8 : 158-164, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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