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今月の主題 早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点 主題
早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点―私はこう考える:内科の立場から
著者: 田中信治1 岡志郎1 金子巌1
所属機関: 1広島大学病院光学医療診療部
ページ範囲:P.1543 - P.1546
文献購入ページに移動早期胃癌に対するESD(endoscopic submucosal dissection)1)が急速に発展し,もはや早期胃癌の標準的治療になりつつあると言っても過言ではなく,2006年4月から保険適応となったことは非常に意義深いことである.ESDでは,従来の絶対適応病変はもとより,さらに大きな病変や潰瘍(UL)を伴う相対適応病変も完全一括切除が可能である2)~4).これにより早期胃癌の完全局所根治と切除病変の詳細な病理組織学的診断が可能となり,正確な根治度判定を行うことができる.ESD標本が根治基準を満たさない場合は,当然,リンパ節郭清を伴う追加手術を行うことになる.
一方,腹腔鏡下手術の進歩もめざましく,従来の開腹手術と比べて,低侵襲な手技で“全層切除+1群所属リンパ節郭清”が可能となっている5)6).その結果,転移の可能性が極めて低い早期胃癌(M癌)に対して積極的に行われている.腹腔鏡下手術のESDに対する優位性は,リンパ節郭清ができるということであるが,全身麻酔を行う必要があるなど,やはり,ESDと比較するとその侵襲は大きい.ESDで大きな早期胃癌も完全一括切除できるようになった現在,われわれは,リンパ節郭清や全層切除の不要な早期胃癌には腹腔鏡下手術の必要性はないと考えている.
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