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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻11号

2006年10月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点 主題

早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点―私はこう考える:病理の立場から

著者: 八尾隆史1 恒吉正澄1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院形態機能病理

ページ範囲:P.1550 - P.1552

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 胃癌治療ガイドライン1)において内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)の適応基準(および拡大適応基準)が提唱されているが,ここではその基準に対する病理学的評価の問題点を挙げながら,ESD(endoscopic submucosal dissection)と腹腔鏡下手術の接点について考えてみたい.

 内視鏡的に切除する場合には,リンパ節転移がないものに対して行われるべきである.胃癌治療ガイドラインにおいては,M癌,2cm以下,分化型の3因子を満たすものがリンパ節転移の危険性がない病変として,EMRの適応病変とされている1).EMRの時代では完全切除可能な病変は2cm程度までなので,完全切除できる分化型M癌はEMR,それ以外の大きなM癌やSM~MP癌でリンパ節転移が画像的にないかその危険性が少ないものは腹腔鏡下手術,リンパ節転移を画像的に認めるもの,あるいはその危険が高いものは開腹手術という理解で十分であった.しかし,ESDが導入されるようになり病変の大きさの制限がなくなり,しかも潰瘍瘢痕があっても切除可能となってきたため,少なくとも腹腔鏡下手術の適応病変の一部は内視鏡的切除で十分根治できるようになってきた.実際は,腹腔鏡下手術ではリンパ節郭清も行っているので仮に結果的にリンパ転移が陽性でも根治は期待できるが,ESDを試行するにあたってはリンパ節転移があってはならないので,リンパ節転移の有無に対してより厳密な評価が必要である.

参考文献

1) 日本胃癌学会(編).胃癌治療ガイドライン(医師用),2 版.金原出版,2004
2) Gotoda T, Yanagisawa A, Sasako M, et al. Incidence of lymph node metastasis from early gastric cancer : Estimation with a large number of cases at two large centers. Gastric Cancer 3 : 219-225, 2000
3) Oya M, Yao T, Nagai E, et al. Metastasizing intramucosal gastric carcinomas. Well differentiated type and proliferating activity using proliferating cell nuclear antigen and Ki-67. Cancer 75 : 926-935, 1995
4) 大屋正文,八尾隆史,恒吉正澄.胃 sm 癌の深達度と粘液形質および癌関連遺伝子産物の発現.胃と腸 32 : 31-39, 1997
5) Song SY, Park S, Kim S, et al. Characteristics of intramucosal gastric carcinoma with lymph node metastatic disease. Histopathology 44 : 437-444, 2004
6) 田邊寛,岩下明徳,原岡誠司,他.転移を来した胃粘膜内癌の特徴―病理形態学的な立場から.胃と腸 41 : 1119-1129, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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