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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻2号

2006年02月発行

文献概要

今月の主題 食道表在癌の内視鏡診断―最近の進歩 主題

食道表在癌深達度診断の進歩―拡大内視鏡vsEUS:拡大内視鏡の立場から

著者: 井上晴洋1 加賀まこと1 菅谷聡1 佐藤嘉高1 小鷹紀子1 里館均1 工藤進英1

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター

ページ範囲:P.197 - P.205

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要旨 咽頭・食道などの扁平上皮領域においては,拡大内視鏡観察の指標としての腺上皮におけるpit patternに当たるものがなく,IPCL(intra-epithelial papillary capillary loop;上皮乳頭内毛細血管ループ)に着目して観察する.このIPCLは,上皮基底層に近接して存在する血管で,傍基底層・基底層の組織変化に相関して特徴的な変化を示すと考えられる.扁平上皮の内視鏡的異型度診断,扁平上皮癌の内視鏡的深達度診断のマーカーになりうると期待される.IPCL Type V-1は“拡張,蛇行,口径不同,形状不均一”の四徴をもって上皮内癌と内視鏡的に診断され,癌の浸潤に伴いIPCL Type V-2,V-3と破壊,腫瘍血管化が進んでゆく.IPCL Type VNはsm深部浸潤癌に特徴的な所見である.拡大内視鏡観察における異常所見からは,実際の癌浸潤はその観察所見に同等のレベルか,それ以深まで及んでいると推測される.拡大内視鏡観察が最大の効力を発揮するのは,平坦な病変に対する内視鏡的異型度診断であり,IPCL Type IV以上の病変を治療対象と臨床判断するところにある.既に,拡大内視鏡観察は通常内視鏡から独立した別個の検査ではなく,スクリーニング内視鏡検査に包括された通常観察の一部となりつつある.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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