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学会印象記
DDW-Japan 2005(第13回日本消化器関連学会週間)―食道に関するテーマを中心に
著者: 井上晴洋1
所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター
ページ範囲:P.224 - P.224
文献購入ページに移動 教育講演1「消化器癌の診断と治療(食道癌)」では,補助CRT(chemo-radiotherapy)と根治CRTは明確に区別すべきことが強調された.根治的CRTは既に一定の成績が報告されており,局所制御が不十分になった場合に,サルベージ手術やPDT(photodynamic therapy)などの治療法が選択されることが示された.また晩期毒性についても言及された.シンポジウム9「食道sm癌に対する治療戦略」が行われた.m3,sm1癌を境にEMR(endoscopic mucosal resection)/ESD(endoscopic submucosal dissection),外科手術,化学放射線療法といった治療が交錯する.もとより,局所切除であるEMR/ESDと,外科手術の間において,治療侵襲の大きさに格差があるため,それぞれの適用にあたって,高齢者やpoor risk患者では,治療方針決定に躊躇することも少なくはない.“sm癌に対するEMR+α治療”,“T1に対する化学放射線療法を先行した治療”,“sm癌に対する外科手術でsentinel nodeを中心とした重点隔清”など,多角的な検討がなされた.m3,sm1癌では,EMR/ESDによる詳細な病理組織学的検討が有用で,EMR/ESD後の追加治療法の検討が今後の課題である.放射線治療も良好なCR率が報告されたものの,再発あるいは晩期毒性について留意が必要であるとの指摘もあった.ワークショップ27「中下咽頭表在癌に対する内視鏡診断と治療」が行われた.近年,中・下咽頭領域においても,食道粘膜癌と同様に表在性の病変の拾い上げ診断が可能となってきた.特にNBI(narrow band imaging)併用の拡大内視鏡によりIPCL type IV,Vにhigh-grade dysplasiaやm1の癌が存在することが明らかとなり,そのような病変に対しては,内視鏡的粘膜切除術やESD,耳鼻科の内視鏡マイクロ外科手術(市立川崎病院消化器科 大森泰ら)が適応されはじめ,良好な成績を上げはじめている.中・下咽頭は消化器内視鏡の通過点であるが,疾患態度は基本的に食道癌に類似しており,今後,中・下咽頭は消化器内視鏡医が拾い上げ診断の中心的存在となることが予想される.また治療においては,耳鼻科,頭頸部科との連携が重要となる.
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