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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻4号

2006年04月発行

文献概要

特集 消化管内視鏡治療2006 各論 1.早期癌に対する内視鏡治療

4)大腸 (2)ESD

著者: 田中信治1 岡志郎1 金尾浩幸1 河村徹1 吉岡京子2 児玉美千世2 金子巌2 平田真由子2 毛利律生2 吉田成人2 吉原正治2 茶山一彰2

所属機関: 1広島大学光学医療診療部 2広島大学大学院分子病態制御内科学

ページ範囲:P.553 - P.559

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要旨 大腸腫瘍に対するESD(endoscopic submucosal dissection)は,現時点では,まだまだ手技の難易度が高く穿孔などの偶発症発症率が高いため,一般内視鏡医が標準的に行う段階には至っていない.大腸腫瘍の臨床病理学的特性や術前の精密診断学の精度などを考慮すると,大腸腫瘍に対するESDの適応として,スネアによる一括切除が困難な①LST-NG,特にpseudodepressed type,V型pit patternを呈する病変,大きなポリープ,sm浸潤癌,②biopsyや病変の蠕動によるprolapseに起因する線維化を伴う粘膜内病変,③内視鏡的切除後の局所遺残早期癌,④潰瘍性大腸炎などの慢性炎症を背景としたsporadicな局在腫瘍など,が挙げられる.腺腫性病変は,計画的分割EMR(endoscopic piecemeal mucosal resection ; EPMR)で十分根治可能である.実際のESD手技には,FlexナイフやHookナイフなどの先端系メスが安全かつ有用で,先端フードや,局注液としてのヒアルロン酸ナトリウムは必須である.治療法選択にあたっては,EMR・ESD・腹腔鏡下切除術,いずれも術者の技量に大きく影響されるので,どれを選択するかは術者の技量や施設の状況に応じて決定すべきであり,技量を超えた無理な治療によって,これら新しい治療法の発展・標準化にブレーキをかけることのないようにしたい.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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