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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻5号

2006年04月発行

文献概要

今月の主題 陥凹性小胃癌の診断―基本から最先端まで 主題

陥凹型小胃癌の診断―X線の立場から:背景粘膜を含めて

著者: 中島寛隆1 長浜隆司1 大倉康男2 吉田諭史1 馬場保昌1 宮本彰俊12 中野利香1 丸山雅一1 八巻悟郎3 幸田隆彦45 松川正明4

所属機関: 1早期胃癌検診協会中央診療所 2杏林大学医学部病理学 3こころとからだの元氣プラザ消化器科 4昭和大学附属豊洲病院内科 5幸田クリニック

ページ範囲:P.753 - P.762

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要旨 5mm以上10mm以下の陥凹型胃癌65例74病変を組織型,背景粘膜別に分類し,X線の立場から陥凹型小胃癌の診断について検討した.このうち二重造影法で描出良好な51病変でのX線所見の検討では,分化型癌の50.0%が線状バリウム斑として描出されていた.一方,未分化型癌では陥凹面の凹凸不整が76.9%,ひだの異常(集中・やせ・中断)が53.8%にみられたが,典型的な蚕食像の描出は乏しかった(23.1%).陥凹型小胃癌のX線所見は,組織型にかかわらず局面を持ったバリウム斑として描出される頻度が少なく,限局性の線状バリウム斑や顆粒状粘膜,軽度のひだ先端の異常を基本所見として診断を行う必要がある.背景粘膜別の描出能では,F,P領域に比べf領域が95%で成績が最も良好だった.f領域は既存の粘膜ひだが少なく,粘膜萎縮が高度でないことから,陥凹の所見が現れやすく,小さな病変でも二重造影法で描出しやすいためと考えられた.またF領域では,ひだに埋没する病変やびらん形成のない病変が多く,P領域では特に小彎側,幽門輪近傍で二重造影像の辺縁像と圧迫法のみでしか描出されない病変が多かった.多発癌症例は29.2%であり,副病変としての陥凹型小胃癌は描出が不十分なものが多くみられた.多発癌の診断は今後の課題の1つと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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