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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻5号

2006年04月発行

文献概要

今月の主題 陥凹性小胃癌の診断―基本から最先端まで 主題

陥凹性小胃癌の鑑別診断―拡大内視鏡所見と通常内視鏡所見の対比

著者: 八尾建史1 長浜孝1 宗祐人1 田辺寛2 菊池陽介3 尾石樹泰4 岩下明徳2 松井敏幸1

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器科 2福岡大学筑紫病院病理部 3きくち胃腸科内科クリニック 4尾石胃腸科内科医院

ページ範囲:P.781 - P.794

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要旨 目的:陥凹型小胃癌の通常内視鏡所見と拡大内視鏡所見を対比し,通常内視鏡所見の成り立ちを求めるとともに,それぞれの診断能を求めた.方法:胃癌群19病変を対象に,胃炎群19病変を対照とし,色調と微小血管構築像,陥凹境界の性状とdemarcation lineの関連を検討し,両群間の頻度を求めた.成績:通常内視鏡の色調の中でも,発赤調,同色調,褪色調などの発赤の多寡については,拡大観察で得られる粘膜上皮下の微小血管密度の多寡と一致していた.色調の分布については,通常内視鏡で認められる不均一な発赤は,拡大内視鏡で認められるirregular microvascular patternの中でも比較的大きなirregular microvesselsが不規則に分布している像から成り立っていると考えられた.陥凹境界の性状について,通常観察における不規則な陥凹境界の頻度は,胃癌群と胃炎群では,有意に胃癌群に多いものの胃炎群にも少なからず認めた.拡大観察による病変と背景胃粘膜の境界線すなわちdemarcation lineの形状を検討した結果,胃癌群は,19例中16例(84.2%)が不規則で,胃炎群はすべて規則的であった.結語:通常内視鏡所見の解釈は,微小血管構築像に基づく拡大内視鏡所見で,ある程度可能であり,特に内視鏡的色調の成り立ちについて明快であった.陥凹型小胃癌の診断能は拡大内視鏡が優れてはいるが,通常観察と拡大観察は独立した検査ではなく,実際の内視鏡検査では通常観察像の特徴や成り立ちをよく理解し,通常内視鏡で癌を疑った病変に対し,引き続き拡大観察を行い診断の精度を上げる工夫をすることが,肝要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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