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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻5号

2006年04月発行

早期胃癌研究会症例

深達度および組織型診断に苦慮する形態を呈した高分化型食道扁平上皮癌の1切除例

著者: 清水香代子1 古賀秀樹12 八尾隆史3 吉田和弘4 鎌田智有1 楠裕明1 武田昌治1 本多啓介1 定平吉都5 角田司4 春間賢1

所属機関: 1川崎医科大学内科学(食道・胃腸科) 2九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 3九州大学大学院医学研究院形態機能病理学 4川崎医科大学消化器外科学 5川崎医科大学消化器病理学

ページ範囲:P.835 - P.843

文献概要

要旨 患者は50歳代の男性で,便潜血検査陽性の精密検査目的で入院となった.上部消化管内視鏡検査で,切歯から約38cmの食道に卵円形の陥凹性病変を認めた.陥凹内部は凹凸不整で粗大顆粒を認め,周囲にはやや白色調の細い周堤様隆起を伴っていた.術前のX線検査所見では,陥凹は明瞭であったが,伸展性は比較的保たれていた.この所見からはsm浸潤はあっても少量にとどまると考えられた.内視鏡検査所見では,明瞭な陥凹性病変内に顆粒を伴い,縦じわが陥凹内で消失していたことから,sm1~sm2への浸潤が類推された.両者の所見に若干の乖離を認めたが,sm2程度の浸潤を伴った食道癌と術前診断し,外科的切除を行った.切除標本の病理組織学的検索では,高分化型扁平上皮癌で,一部にsm1までの浸潤を認めたが,病変の大部分はm3にとどまっていた.本症例は高分化型扁平上皮癌でありながら,深い陥凹とその周囲の正常粘膜で覆われた周堤様隆起を認め,深達度および組織型の診断が困難であった.

参考文献

1) 日本食道疾患研究会(編).食道癌取扱い規約,9版.金原出版,1999
2) 幕内博康,島田英雄,千野修,他.粘膜下腫瘍様の食道表在癌の内視鏡診断.胃と腸 32 : 701-709, 1997
3) 松田圭二,渡辺英伸,桑原史郎,他.粘膜下腫瘍様の食道表在癌.胃と腸 32 : 671-689, 1997
4) 八巻悟郎,大倉康男,西沢護,他.粘膜下腫瘍様の食道表在癌のX線診断.胃と腸 32 : 691-700, 1997
5) 荻原英夫,小笹芳子,栗原正典,他.深達度smの食道粘表皮癌の1例.胃と腸 36 : 618-621, 2001
6) 細井董三,入口陽介,大浦通久,他.食道癌の深達度診断―1)二重造影像からみた深達度診断.胃と腸 36 : 283-294, 2001
7) 吉田操,門馬久美子,葉梨智子,他.食道癌の深達度診断―2)内視鏡像からみた深達度診断.胃と腸 36 : 295-306, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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