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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸41巻7号

2006年06月発行

雑誌目次

今月の主題 Helicobacter pyloriに起因しないとされる良性胃粘膜病変 序説

Helicobacter pylori に起因しないとされる良性胃粘膜病変

著者: 春間賢

ページ範囲:P.999 - P.1000

 オーストラリアのWarrenとMarshallにより発見されたHelicobacter pylori(H. pylori)が,組織学的胃炎だけでなく,消化性潰瘍や胃癌,胃過形成性ポリープなど上部消化管に発生する多くの器質的疾患と関連があることが明らかとなった.H. pylori陽性の消化性潰瘍に除菌治療を行うことにより,潰瘍の再発は著しく抑制される.また,除菌治療により胃過形成性ポリープが消失あるいは,縮小することも明らかにされている.胃癌患者の多くはH. pylori感染陽性の胃粘膜に発生しており,これまで行われてきた多くの疫学的な研究はH. pylori感染と胃癌との関連を支持するものである.最近の消化管疾患の分野での大きなトピックスとしては,H. pylori陽性胃炎患者に除菌治療を行うことにより,将来的な胃癌発生が抑制されるか,あるいは胃癌の増殖を抑制することができるかであり,動物実験を含めたいくつかの大規模試験の報告はその可能性を支持している.H. pyloriの除菌治療は,これまでの診断学では考えられなかった,胃粘膜の萎縮や腸上皮化生の進展を阻止することや,場合によっては改善する可能性がある.

主題

Helicobacter pylori陽性と陰性の胃粘膜所見の特徴―胃X線所見

著者: 中島滋美 ,   山岡水容子 ,   土井馨 ,   野須原厚志 ,   西村政彦 ,   佐藤仁 ,   嶋田光恵 ,   宮川明子 ,   井上徹也 ,   奥村嘉章 ,   山下敬司

ページ範囲:P.1001 - P.1008

要旨 Helicobacter pylori抗体陽性の胃のX線画像の特徴は,粗ぞうな胃粘膜像93.2%,体部大彎側にひだが分布するC型分布とひだが消失またはほとんど消失しているD型分布77.2%で,ひだの形は丈が高く,立ち上がりが急で,伸展性が悪く,表面が不整なもの(異常型)と消失型ひだを合わせると91.3%であった.ひだの太さは4.5mm以上のものが82.4%であった.Helicobacter pylori抗体陰性の胃では,86.7%が平滑な胃粘膜像を示し,ひだの分布は体部大彎から小彎まで分布するAまたはB型が68.6%,ひだの形は正常または中間型が69.8%,ひだの太さは4.5mm未満が72.7%であった.

Helicobacter pylori陽性と陰性の胃粘膜所見の特徴―内視鏡所見

著者: 川口実 ,   野澤秀樹 ,   田中政道 ,   河村晴信 ,   北洞哲治 ,   唐澤英偉 ,   坂井雄三 ,   和泉秀彰

ページ範囲:P.1009 - P.1016

要旨 通常内視鏡による胃粘膜の観察で,どのくらいHelicobacter pylori(H. pylori)の存在が診断可能か検討した.従来から言われている“まだら模様”胃粘膜,胃体部大彎の粘膜皺襞の肥厚・蛇行,粘液付着,びまん性発赤および鳥肌状胃粘膜をH. pylori陽性所見とし,胃体部の“鳥の足”様微細血管所見(regular arrangement of collecting venules ; RAC)をH. pylori陰性所見とした.内視鏡によるH. pyloriの陽性・陰性の診断率は72.5%であった.所見別に検討するとRAC陽性ではH. pylori陰性が95.1%であり,RACはH. pylori陰性を示唆する重要な所見である.しかし,RAC陽性は必ずしも胃全体のH. pylori陰性を示すものではなく,その局所粘膜のH. pylori陰性を表現するものである.胃底腺ポリープ,表層性胃炎などの場合 RAC を認めることが多い.

Helicobacter pylori陽性と陰性の胃粘膜所見の特徴―拡大内視鏡による診断

著者: 八木一芳 ,   坪井清孝 ,   中村厚夫 ,   関根厚雄

ページ範囲:P.1017 - P.1024

要旨 H. pylori非感染胃粘膜と感染粘膜の拡大像の違いは次のようにまとめられる.体部ではH. pylori非感染粘膜は集合細静脈,真性毛細血管のネットワーク,ピンホール状のpitから形成されている.感染粘膜では集合細静脈は見えず,pitも白濁・開大している.幽門部では非感染粘膜は整然とした粘膜模様に沿って微細血管が走行しているが,感染粘膜では大小不同・不整な粘膜模様に不整な微細血管が観察される.噴門部では非感染粘膜では集合細静脈を伴う胃底腺が食道・胃接合部直下まで存在し,噴門部粘膜は極めて狭い.感染粘膜では噴門部粘膜が長くなっており食道扁平上皮下端に黄色隆起を呈する食道噴門腺を認めることが多い.酢酸撒布による拡大内視鏡では食道噴門腺の露出が観察される.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の病理所見

著者: 八尾隆史 ,   恒吉正澄

ページ範囲:P.1025 - P.1032

要旨 Helicobacter pylori(H. pylori)が発見され,H. pyloriが胃炎の主要因であることが明らかにされ,胃炎の考え方や分類は大きく転換した.しかしながら,胃炎および胃粘膜病変にはH. pyloriに起因しないとされる種々の非腫瘍性の粘膜病変が存在する.それらには,①胃炎関連病変:急性・慢性胃炎,特殊型胃炎(逆流性胃炎,化学物質・薬剤による胃粘膜傷害,肉芽腫性胃炎,感染性胃炎,好酸球性胃炎,collagenous gastritis),②腫瘍様病変(肥厚性胃炎,胃底腺ポリープ/ポリポーシス,特殊な消化管ポリープ/ポリポーシス,③その他(血管性病変,放射線性・抗癌剤性胃炎,アミロイドーシス,移植片対宿主病)などがあり,本稿でその組織学的特徴を概説した.今後,H. pyloriがそれぞれの疾患の増悪・軽快や癌化に及ぼす影響あるいはそれらの疾患がH. pyloriによる胃炎に及ぼす影響について解明していく必要があるが,まずこれらの組織学的特徴を理解しておくことが重要である.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の形態―全身疾患に伴う胃粘膜病変:Crohn病と結節性多発動脈炎を中心に

著者: 古賀秀樹 ,   春間賢 ,   垂水研一 ,   清水香代子 ,   松本啓志 ,   鎌田智有 ,   楠裕明 ,   武田昌治 ,   本多啓介 ,   松本主之 ,   飯田三雄

ページ範囲:P.1033 - P.1044

要旨 消化管病変を伴う全身疾患は決してまれではないが,下部消化管に好発することが多く,上部消化管,特に胃に良性粘膜病変を合併する疾患は限定される.Crohn病と結節性多発動脈炎について多数の自験例を集計したところ,Crohn病では前庭部アフタ様病変が多く,胃潰瘍は頻度こそ少ないものの非定型的な形態を呈していた.噴門部の竹の節状外観はCrohn病患者の79%に認められ,病的意義は不明であるが診断的価値の高い胃粘膜変化であった.結節性多発動脈炎では,20%程度に胃病変が観察され,その多くは多発性胃潰瘍であった.さらに,Schoonlein-Henoch紫斑病,結節性硬化症,慢性移植片対宿主病に伴う特徴的胃病変の画像所見も呈示した.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の形態―薬剤による胃粘膜病変:NSAIDs,低用量アスピリン起因性について

著者: 溝上裕士 ,   下河辺宏一 ,   西上隆之 ,   伊藤真典 ,   竹原央 ,   岩本淳一

ページ範囲:P.1045 - P.1051

要旨 高齢化社会を迎え,虚血性心疾患,脳血管障害の患者が増加しており,2次予防として,低用量アスピリンの使用が増加している.最近当院で経験した消化性潰瘍を,低用量アスピリン(以下A群),アスピリン以外のNSAIDs(以下N群),非アスピリン・非NSAIDs(以下C群)に分け,比較検討した.内訳はA群,N群,C群で各々7%,18%,75%であり,NSAIDs(A群+N群)が1/4を占めていた.吐血,下血,貧血などの出血症状は,A群,N群,C群で各々53.6%,45.2%,31.2%であり,A群で高率であった.発生部位は,N群は前庭部に多かったが,A群はC群と差がなかった.大きさは,A群はN群より小さい傾向を認めた.数は各群間で差がなかった.Helicobacter pylori陽性率は,A群はC群と差がなかったが,N群はC群に比して低率であった.病理組織像は,前庭部の多核白血球浸潤の程度がA群,N群ではC群に比して軽かった.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の形態―残胃炎

著者: 松倉則夫 ,   落合正宏 ,   加藤俊二 ,   徳永昭

ページ範囲:P.1053 - P.1059

要旨 幽門側胃切除術後の残胃炎は残胃の癌の発生母地となるが,十二指腸液逆流と相関する肉眼的残胃炎とH. pylori感染と相関する組織学的残胃炎とに分けられ,炎症性サイトカインIL-8は両者で誘導される.十二指腸液逆流が高度な吻合部にgastritis cystica polyposa(GCP)が認められる症例があり,残胃発癌における前癌病変と考えられる.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の形態―Crohn病以外の肉芽腫性病変

著者: 小林広幸 ,   渕上忠彦 ,   堺勇二 ,   大城由美 ,   岩下明徳 ,   小島進

ページ範囲:P.1061 - P.1067

要旨 胃に肉芽腫性病変を生じる疾患のうち,Crohn病以外の代表的疾患である,結核,サルコイドーシス,梅毒などについて,その形態学的特徴を含めた臨床像について概説した.いずれの疾患も胃粘膜に不整な潰瘍・びらんを主体とする病変を生じることが多いが,結核とサルコイドーシスでは多彩な形態を呈するためX線・内視鏡所見のみから診断することは困難である.一方,胃梅毒は幽門前庭部に好発し,X線では全周性漏斗状狭窄,内視鏡では易出血性の浅い不整形の多発潰瘍やびらんを呈し,副病変として胃体部に梅毒性皮疹類似の粘膜病変を伴うなど,X線・内視鏡の特徴的所見から診断可能なことが多い.肉芽腫性胃炎を生じる疾患はいずれもまれな疾患でありX線・内視鏡のみでは診断困難な場合も少なくないため,個々の疾患の臨床的特徴も含め鑑別診断を行っていくことが必要である.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の形態―gastric antral vascular ectasia(GAVE)とdiffuse antral vascular ectasia(DAVE)

著者: 内田善仁 ,   伊藤美奈子 ,   鎌野周平 ,   井上秀幸 ,   杵川文彦 ,   栗山茂樹

ページ範囲:P.1069 - P.1075

要旨 GAVEの内視鏡的特徴は,幽門輪より放射状に縦走する数条の鮮やかな発赤帯である.発赤帯は小さい斑状ないしは点状の発赤が集簇している.そして,個々の発赤点は拡張しコイル状に蛇行した毛細血管から成っている.また,前庭部の蠕動運動が亢進していることが多い.DAVEでも拡張しコイル状に蛇行した毛細血管から成る斑状ないしは点状の発赤が観察できるが,前庭部にほぼ均一に分布している.両疾患ともに,内視鏡検査時に出血しているところを観察したり,また胃内に血液が貯留しているのを見ることはまれである.GAVEと鑑別しなければいけないのは表層性胃炎でみられる櫛状発赤であり,DAVEと鑑別すべき疾患には出血性胃炎,出血傾向のため生じた粘膜内出血,portal hypertensive gastropathy,多発するangiodysplasiaなどがある.治療は内視鏡的熱凝固法が第一選択となる.予後は基礎疾患の重症度が大きく影響する.

Helicobacter pyloriに起因しないとされる胃粘膜病変の形態―胃底腺ポリープ

著者: 小林隆 ,   芳野純治 ,   乾和郎 ,   若林貴夫 ,   服部昌志 ,   磯部祥

ページ範囲:P.1077 - P.1081

要旨 胃底腺ポリープ80例に関して,年齢,男女差,Helicobacter pylori感染の有無,胃粘膜萎縮の程度,好発部位,ポリープの個数や形態などについて検討した.平均年齢は49.7±9.7歳であった.明らかな男女差は認められなかった.胃体部に好発し,単発の例も多発の例も認めた.内視鏡的所見は,大きさは5mm程度で,山田II型を呈し,表面は平滑,色調は周辺胃粘膜とほぼ同様であった.Helicobacter pyloriの感染率は3.75%で,胃粘膜萎縮を認めない例は95.0%と高率であった.これらの所見を認める場合には胃底腺ポリープの可能性が高い.内視鏡による病変および胃粘膜の詳細な観察が診断には大切である.

主題症例

collagenous gastritisの1例―本邦初報告例

著者: 小山茂樹 ,   武田尚子 ,   藤山佳秀 ,   柿木里枝 ,   九嶋亮治 ,   岡部英俊

ページ範囲:P.1082 - P.1088

要旨 症例:22歳,女性.既往歴:3歳時よりアトピー性皮膚炎.現病歴:大学受験時に心窩部痛があったが,受験後軽快.入学後も試験前に心窩部痛が出現し,試験終了後消失を繰り返していた.2000年4月試験終了後も消失しない心窩部痛があったため,近医受診.内視鏡検査を受け多発性胃潰瘍にて当科紹介受診した.身体所見・血液データ:アトピー性皮膚,心窩部に圧痛を認める以外特記すべきことなし.好酸球5.3%,IgE 1,400IU/ml以外特記すべきことなし.内視鏡所見:胃体部全周が陥凹し,白色調を呈し,多発性,散在性に小ポリープ様隆起性病変を認めた.H. pylori:培養,UBT,血清抗体,検鏡ともに陰性であった.PGI/II比は4.35であった.病理所見:内視鏡下生検にて被蓋上皮直下に好酸性物質が帯状に沈着し,Azan染色で強く青に染まり,アミロイド染色は陰性で,collagen bandであった.下部消化管内視鏡検査:全大腸内視鏡検査にて内視鏡的には正常,step biopsyによる病理組織にはcollagen bandは証明されなかった.以上より本症例はcollagenous gastritisと診断した.5年後の内視鏡所見および内視鏡生検病理組織所見は増悪・軽快なく,変化はなかった.

Helicobacter heilmannii感染を認めたBarrett腺癌の1例

著者: 大矢内幹 ,   大原秀一 ,   関根仁 ,   下瀬川徹

ページ範囲:P.1089 - P.1093

要旨 患者は49歳,男性.主訴は心窩部痛.上部消化管内視鏡検査にて食道胃接合部に隆起性病変を認め,生検にて高分化型腺癌が疑われた.胃体上部大彎および前庭部大彎での迅速ウレアーゼ試験は陽性であった.また,胃体上部大彎,前庭部大彎および噴門部の生検組織標本にて,H. pyloriに比べ体長が長くらせん数の多いH. heilmanniiと考えられる菌体を認めた.組織学的胃炎は,胃体上部大彎,前庭部大彎の炎症細胞浸潤を軽度認めるのみであった.食道胃接合部の隆起性病変に対して,内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理診断はadenocarcinoma(tub1),M,ly0,v0であり,病変肛門側の粘膜下層に固有食道腺を認め,Barrett食道由来の腺癌として矛盾しない所見であった.

早期胃癌研究会症例

粘液結節の成分によりmpまで浸潤を認めたIIa+IIc類似進行大腸癌の1例

著者: 名倉一夫 ,   杉山昭彦 ,   冨田栄一 ,   大西涼子 ,   境浩康 ,   木全嵩之 ,   吉川武志 ,   林秀樹 ,   大西隆哉 ,   向井強 ,   西垣洋一 ,   杉原潤一 ,   山田鉄也 ,   下村順子

ページ範囲:P.1098 - P.1106

 症例は72歳,男性.6年前に胃癌のため胃全摘術を受けている.消化管検診の目的で受診,注腸X線検査にてS状結腸にひだ集中を伴い中央に浅い陥凹のある最大径15mmのIIa+IIc型病変を認めた.大腸内視鏡では,立ち上がりはなだらかで,色素撒布により陥凹境界はより明瞭となったが,陥凹面での色素の付着性は不良であった.拡大内視鏡では基部から陥凹辺縁までI型pitで,陥凹内はⅤI型pit,軽度不整であった.超音波内視鏡では第3層に低エコーと結節状の無エコーが混在し,第4層を高度に圧排しており,mpまでの浸潤を疑う所見であった.生検では高分化型腺癌であり,S状結腸切除とD1郭清とした.病理組織診断は粘液結節を伴った高分化型腺癌で深達度mpであり,隆起の主な成因は粘液結節成分であり,結節の最深部でmpに達していた.本症例は早期癌としての形態を保っており,大腸粘液癌の初期像とも考えられた.表面構造が比較的保たれたまま深部への浸潤を認めた癌であり,大腸癌の深達度診断を進めるうえで極めて興味深い症例であった.

早期胃癌研究会

2006年3月の例会から

著者: 長浜隆司 ,   斉藤裕輔

ページ範囲:P.1094 - P.1096

 2006年3月の早期胃癌研究会は3月15日(水)に東商ホールで開催された.司会は長浜隆司(早期胃癌検診協会)と斉藤裕輔(市立旭川病院消化器病センター)が担当した.2例目終了後,2005年早期胃癌研究会最優秀症例として,国立がんセンター中央病院内視鏡部・小田一郎先生,臨床検査部・下田忠和先生による「胃ポリポーシスに合併した胃癌の1例」に対する表彰式と小田先生から症例の解説が行われた.

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欧文目次

ページ範囲:P.997 - P.997

編集後記

著者: 川口実

ページ範囲:P.1108 - P.1108

 本号では“Helicobacter pylori(H. pylori)に起因しないとされる良性胃粘膜病変”の特集を組んだ.胃潰瘍,過形成性ポリープ,MALTリンパ腫など多くの疾患がH. pyloriと関係があるとされている.一方,H. pyloriと関係しない胃粘膜病変も存在する.しかし,“関係しない”と断言することはH. pyloriの感染診断法をすべて行わなければ困難である.そこで今回は可能な感染診断内で,ほとんどの場合陰性で,かつ特徴ある所見を呈する良性胃粘膜病変を取り上げた.全身疾患に伴う胃粘膜病変,薬剤による胃粘膜病変,残胃胃炎,肉芽腫性病変,GAVE,DAVE,胃底腺ポリープ,collagenous gastritisなどを病変として取り上げたが,これら以外に病変は認めないがH. pylori陰性胃粘膜所見についても検討した.H. pylori陰性の胃粘膜所見の特徴はX線学的には粘膜像とひだの性状から予測可能である.内視鏡的には体部ではRACの存在,前庭部ではまだ断定できる所見ではないが微細粘膜模様・微細血管網(regular SECN)の存在で予測可能である.胃粘膜所見からH. pylori陰性が予測可能ならば,不必要なH. pyloriの感染診断を行わなくて済むようになるし,かつX線検査,内視鏡検査の経過観察期間を伸ばすことも可能と考えられる.また,H. pyloriに起因しない病変が,H. pylori感染胃粘膜にも生じることはありうる.そうすると形態学的に,病理学的に,そして病態がどのように変わっていくのかは大変興味深く,今後の課題である.

 本号が胃粘膜病変の病態解明の足掛かりとなり,臨床的には胃粘膜の観察の重要性の喚起となれば幸いである.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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