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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻7号

2006年06月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

粘液結節の成分によりmpまで浸潤を認めたIIa+IIc類似進行大腸癌の1例

著者: 名倉一夫1 杉山昭彦1 冨田栄一1 大西涼子1 境浩康1 木全嵩之1 吉川武志1 林秀樹1 大西隆哉1 向井強1 西垣洋一1 杉原潤一1 山田鉄也2 下村順子3

所属機関: 1岐阜市民病院消化器内科 2岐阜市民病院中央検査部 3朝日大学村上記念病院総合検診センター

ページ範囲:P.1098 - P.1106

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 症例は72歳,男性.6年前に胃癌のため胃全摘術を受けている.消化管検診の目的で受診,注腸X線検査にてS状結腸にひだ集中を伴い中央に浅い陥凹のある最大径15mmのIIa+IIc型病変を認めた.大腸内視鏡では,立ち上がりはなだらかで,色素撒布により陥凹境界はより明瞭となったが,陥凹面での色素の付着性は不良であった.拡大内視鏡では基部から陥凹辺縁までI型pitで,陥凹内はⅤI型pit,軽度不整であった.超音波内視鏡では第3層に低エコーと結節状の無エコーが混在し,第4層を高度に圧排しており,mpまでの浸潤を疑う所見であった.生検では高分化型腺癌であり,S状結腸切除とD1郭清とした.病理組織診断は粘液結節を伴った高分化型腺癌で深達度mpであり,隆起の主な成因は粘液結節成分であり,結節の最深部でmpに達していた.本症例は早期癌としての形態を保っており,大腸粘液癌の初期像とも考えられた.表面構造が比較的保たれたまま深部への浸潤を認めた癌であり,大腸癌の深達度診断を進めるうえで極めて興味深い症例であった.

参考文献

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2) 工藤進英,大森靖弘,樫田博史,他.大腸の新しい pit pattern 分類―箱根合意に基づいた VI,VN 型 pit pattern.早期大腸癌 9 : 135-140, 2005
3) 工藤進英.早期大腸癌―平坦・陥凹型へのアプローチ.医学書院,1993
4) 工藤進英.大腸 pit pattern 診断.医学書院,2005
5) 寺井毅,阿部哲史,平井周,他.V 型 pit pattern の診断とその臨床的意義( 3 )V型 pit pattern をめぐる臨床病理学的検討.早期大腸癌 5 : 533-540, 2001
6) 阿部哲史,寺井毅,佐藤信絋.深達度診断が困難であった IIa+IIc 型大腸進行癌の 1 例.早期大腸癌 5 : 564-565, 2001
7) 貞広荘太郎,大村敏郎,磯部陽,他.大腸粘液癌の組織分類に関する検討―粘液結節成分の面積比率の検討.大腸肛門会誌 43 : 1329-1332, 1990
8) 弥政晋輔,廣田映五,板橋正幸,他.大腸粘液癌の臨床病理学的検討.日消外会誌 21 : 75-88, 1988
9) Morson BC, Whiteway JE, Jones EA, et al. Histopathology and prognosis of malignant colorectal polyps treated by endoscopic polypectomy. Gut 29 : 437-444, 1984

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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