文献詳細
文献概要
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編集後記
著者: 川口実
所属機関:
ページ範囲:P.1108 - P.1108
文献購入ページに移動 本号では“Helicobacter pylori(H. pylori)に起因しないとされる良性胃粘膜病変”の特集を組んだ.胃潰瘍,過形成性ポリープ,MALTリンパ腫など多くの疾患がH. pyloriと関係があるとされている.一方,H. pyloriと関係しない胃粘膜病変も存在する.しかし,“関係しない”と断言することはH. pyloriの感染診断法をすべて行わなければ困難である.そこで今回は可能な感染診断内で,ほとんどの場合陰性で,かつ特徴ある所見を呈する良性胃粘膜病変を取り上げた.全身疾患に伴う胃粘膜病変,薬剤による胃粘膜病変,残胃胃炎,肉芽腫性病変,GAVE,DAVE,胃底腺ポリープ,collagenous gastritisなどを病変として取り上げたが,これら以外に病変は認めないがH. pylori陰性胃粘膜所見についても検討した.H. pylori陰性の胃粘膜所見の特徴はX線学的には粘膜像とひだの性状から予測可能である.内視鏡的には体部ではRACの存在,前庭部ではまだ断定できる所見ではないが微細粘膜模様・微細血管網(regular SECN)の存在で予測可能である.胃粘膜所見からH. pylori陰性が予測可能ならば,不必要なH. pyloriの感染診断を行わなくて済むようになるし,かつX線検査,内視鏡検査の経過観察期間を伸ばすことも可能と考えられる.また,H. pyloriに起因しない病変が,H. pylori感染胃粘膜にも生じることはありうる.そうすると形態学的に,病理学的に,そして病態がどのように変わっていくのかは大変興味深く,今後の課題である.
本号が胃粘膜病変の病態解明の足掛かりとなり,臨床的には胃粘膜の観察の重要性の喚起となれば幸いである.
本号が胃粘膜病変の病態解明の足掛かりとなり,臨床的には胃粘膜の観察の重要性の喚起となれば幸いである.
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