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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻8号

2006年07月発行

文献概要

今月の主題 転移陽性胃粘膜内癌の特徴と取り扱い 主題

転移を来した胃粘膜内癌の特徴―病理形態学的な立場から

著者: 田邉寛12 岩下明徳1 原岡誠司1 池田圭祐12 大重要人12 太田敦子13 西俣伸亮12 二見喜太郎3 松井敏幸2

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部 2福岡大学筑紫病院消化器科 3福岡大学筑紫病院外科

ページ範囲:P.1119 - P.1129

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要旨 自験外科切除胃粘膜内癌669例を用い,リンパ節転移陽性例の臨床病理学的および免疫組織化学的特徴の検討を行った.対象669例のうちリンパ節転移陽性例は14例(2.1%)で,女性,60歳以下の比較的若年者(p<0.05),腫瘍最大径が31mm以上の大きい病変(p<0.01),組織型が未分化型癌(p<0.05),分化型癌では混合型(p<0.05),肉眼型が陥凹型,潰瘍合併例〔UL(+)〕(p<0.01)に多く,また転移陽性胃粘膜内癌は全例胃型粘液形質を有し,そのうち未分化型癌では,全例明らかな2層構造やKi-67陽性増殖細胞の局在性はみられなかったことも注目すべき事項であった.病理組織学的事項とリンパ節転移の有無の検討では,①隆起型,平坦型でUL(-)なら組織型,大きさに関係なく転移を認めず,②大きさが10mm以下であるなら肉眼型,組織型,ULの有無に関係なく転移をみなかった.また,③胃癌治療ガイドラインでのEMRの適応条件である“2cm以下の分化型癌,陥凹型ならUL(-)”を満たす病変はリンパ節転移を認めず,これを支持できた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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