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追悼
熊倉賢二先生の教え
著者: 杉野吉則1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部放射線診断科
ページ範囲:P.1219 - P.1219
文献購入ページに移動 熊倉賢二先生は,昭和30~40年代に白壁彦夫先生,市川平三郎先生とともに胃の二重造影法を駆使して早期胃癌のX線診断学を確立されましたが,昭和49年に慶應義塾大学の教授として迎えられる少し前から,東芝と消化管X線装置の開発を始められました.これは,消化管X線診断をさらに向上させるには装置の改良が必須であると考えられたからです.慶應義塾大学在任中は装置の改良がメインのテーマとなり,微細所見が描出できる高解像度の装置を開発することに没頭されました.
装置の改良に際して,先生はその構造について細部にわたるまですべてをご自分で理解されました.まず,メーカーの技術者に何度も説明を求め,さらに集めた参考資料を私どもと繰り返し読み返し,討論しました.議論は執拗なものであり,前日に結論が出たと思ったことでも,翌日にはまた最初から始まり,先生が納得されるまでは先へ進まず,一歩一歩確実に積み上げていくといったものでした.その結果,メーカーが気づかなかったような改良の発想や,装置の問題点をたびたび指摘され,それがその後のX線装置開発の骨子となりました.この手法はまさに早期胃癌のX線画像をマクロ標本や病理所見と詳細に対比し作り上げられたわが国の消化管X線診断学そのもので,形態学の真髄であったと考えております.
装置の改良に際して,先生はその構造について細部にわたるまですべてをご自分で理解されました.まず,メーカーの技術者に何度も説明を求め,さらに集めた参考資料を私どもと繰り返し読み返し,討論しました.議論は執拗なものであり,前日に結論が出たと思ったことでも,翌日にはまた最初から始まり,先生が納得されるまでは先へ進まず,一歩一歩確実に積み上げていくといったものでした.その結果,メーカーが気づかなかったような改良の発想や,装置の問題点をたびたび指摘され,それがその後のX線装置開発の骨子となりました.この手法はまさに早期胃癌のX線画像をマクロ標本や病理所見と詳細に対比し作り上げられたわが国の消化管X線診断学そのもので,形態学の真髄であったと考えております.
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