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文献詳細

雑誌文献

胃と腸41巻9号

2006年08月発行

今月の主題 通常内視鏡による大腸sm癌の深達度診断 垂直侵潤距離1,000μm術前診断の現状

症例検討

大腸sm癌深達度診断の現状―前向き検討―集計結果の解析と臨床的考察

著者: 斉藤裕輔1 田中信治2 藤谷幹浩3 多田正大4 工藤進英5 小林広幸6 鶴田修7 津田純郎8

所属機関: 1市立旭川病院消化器センター 2広島大学病院光学医療診療部 3旭川医科大学第3内科 4多田消化器クリニック 5昭和大学横浜北部病院消化器センター 6松山赤十字病院胃腸センター 7久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門 8福岡大学筑紫病院消化器科

ページ範囲:P.1241 - P.1249

文献概要

はじめに

 表面型大腸腫瘍の発見頻度やsm癌に対する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)件数の増加に伴い1)~3),大腸sm癌の根治基準が変更されることとなった.すなわち従来の大腸癌取扱い規約における“smにわずかに浸潤した癌(200~300μm程度に相当)”4)から,sm癌取り扱いプロジェクト研究委員会から提唱された“sm垂直浸潤距離1,000μm未満で脈管侵襲を認めない病変”5)とされ,新しい大腸癌取扱い規約にも記載される予定である.われわれ臨床医にとって今後はこのsm垂直浸潤距離1,000μmの術前診断精度の向上が重要となる.大腸sm癌の深達度診断に拡大内視鏡6)7)や,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography;EUS)検査8)が有用であることは疑いの余地はないが,一般臨床家においては時間的な制約や技術的な問題もあるため,実際にはこれらの検査を行っている施設は全体からみると少ないのが現状である9)10)

 これを受けて2004年7月に大腸癌研究会「内視鏡摘除の適応」プロジェクト研究班が多田正大委員長のもと組織された.この研究班の目標は,“内視鏡治療可能な大腸sm癌の通常内視鏡所見(色素撒布を含む)を明らかにし,治療指針を作成する.これらの診断に拡大内視鏡やEUSは用いない”,である.

 本特集では,この研究班の7名の委員(以下,ベテラン)の施設から集められた病理組織学的sm浸潤距離の明らかなsm癌,180症例の中から,隆起型15例,表面型15例の30例(症例提示は1257頁から)を選択し,若手の先生方に前向きに読影いただき,正診率(1,000μm未満か,以上か),浸潤所見の拾い上げの有無についてベテランの読影結果と比較した.なお,ベテランの読影結果の詳細については「胃と腸」誌40巻13号をご参照いただきたい11).今回の対象症例30例の内訳をFig.1に示す.病変の大きさでは10mm未満;4病変,10~19mm;24病変,20mm以上;2病変であり,sm浸潤距離では1,000μm未満が13病変,1,000μm以上が17病変である.読影いただいた所見の内容についてTable 1に示すが,プロジェクト研究班で読影したのと同様の項目である.また,読影いただいた若手医師名と所属施設をTable 2に示す.「胃と腸」誌の編集委員から推薦いただいた卒後7~13年の医師の8名である.なお,Table 2の読影医の順と結果グラフ中の正診率の順は一致していない.

参考文献

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3) Tsuda S, Veress B, Toth E, et al. Flat and depressed colorectal tumors in a southern Swedish population: a prospective chromoendoscopic and histopathological study. Gut 51 : 550-555, 2002
4) 大腸癌研究会(編).大腸癌取扱い規約,6 版.金原出版,1998
5) 喜多嶋和晃,藤盛孝博,藤井茂彦,他.病理組織学的因子からみた大腸 sm 癌のリンパ節転移危険因子―大腸癌研究会 sm 癌取り扱いプロジェクト研究委員会の解析から.胃と腸 39 : 1329-1337, 2004
6) 岡志郎,田中信治,金子巌,他.大腸 sm 癌における浸潤度の臨床的検討―拡大内視鏡を中心に.胃と腸 39 : 1363-1373, 2004
7) 唐原健,鶴田修,河野弘志,他.大腸 sm 癌における浸潤度の臨床的精度―各種検査法の組み合わせによる診断.胃と腸 39 : 1387-1398, 2004
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9) 斉藤裕輔,渡二郎,藤谷幹浩,他.大腸 sm 癌における浸潤度の臨床的精度― sm 浸潤距離 1,000μm に対する通常内視鏡の診断能.胃と腸 39 : 1350-1356, 2004
10) 津田純雄,小林広幸,菊池陽介,他.大腸 sm 癌の深達度診断―垂直浸潤距離 1,000μm に対する X 線学的伸展不良所見の診断精度の検討.胃と腸 39 : 1339-1349, 2004
11) 斉藤裕輔,多田正大,工藤進英,他.通常内視鏡による大腸 sm 癌垂直浸潤距離 1,000μm の診断精度と浸潤所見―大腸癌研究会「内視鏡摘除の適応」プロジェクト研究班結果報告.胃と腸 40 : 1855-1858, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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