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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻1号

2007年01月発行

文献概要

今月の主題 胃分化型SM1癌の診断―垂直浸潤500μm 主題

胃分化型SM1癌(垂直浸潤500μm未満)の診断―500μm以上と対比して―ひだ集中のない陥凹型胃癌に対するX線診断

著者: 中原慶太1 鶴田修1 立石秀夫2 渡辺靖友2 田宮芳孝2 芹川習2 米湊健2 佐田通夫2 有馬信之3

所属機関: 1久留米大学医学部内科学講座・消化器内科部門 2公立八女総合病院消化器内科 3熊本市民病院病理

ページ範囲:P.25 - P.38

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要旨 目的:分化型SM胃癌の垂直距離からみたX線的な描出能や組織学的な特徴を明らかにする.対象と方法:ひだ集中のない陥凹型pSM癌70病変を対象とし,X線・組織所見を対比検討した.結果:①pSM1癌とpSM2癌の臨床病理学的な差異:pSM1癌に比べpSM2癌は,中分化型主体,0IIc+IIa型を呈し,リンパ管侵襲率が有意に高かった.②SM垂直距離からみた5つの撮影手技単独のX線的描出感度:いずれの撮影手技も描出(+)群はほとんどが500μm以上のpSM2癌であった.描出(-)群は垂直距離にばらつきが認められ,撮影手技単独による描出の限界が示唆された.③SM垂直距離別にみた総合的なX線的描出感度:5つの撮影手技を駆使した場合,1,000μm以上あれば描出感度は90%と良好であった.しかし,500μm未満ではほとんど描出不能で,500~999μmは50%と不良であった.④SM垂直距離別にみたSM癌巣の組織学的な特徴:500μm未満は,Mとの厚さの比:M>SM,SM水平距離:5mm未満,Mとの幅の比:M>>SM,SM発育分布形式:点状,線維形成反応:なし~軽度,粘膜筋板の状態:保持~部分断裂がほとんどを占め,SM癌巣の厚さ・硬さに関連する組織因子に乏しく,1,000μm以上と深いほど著明であったことが,描出感度の差の要因と思われた.結論:SM癌巣の組織学的な特徴の違いから,X線的に良好な描出が得られる垂直距離は1,000μm以上で,今後は500~999μmに対する診断能向上が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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