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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻11号

2007年10月発行

文献概要

今月の主題 ESD時代における未分化型混在早期胃癌の取り扱い 主題

未分化型混在早期胃癌の臨床病理学的特徴とリンパ節転移

著者: 田邉寛12 岩下明徳1 原岡誠司1 池田圭祐12 大重要人12 太田敦子13 西俣伸亮12 二見喜太郎3 松井敏幸2 長浜孝2

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部 2福岡大学筑紫病院消化器科 3福岡大学筑紫病院外科

ページ範囲:P.1561 - P.1576

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要旨 自験外科切除早期胃癌756例(M癌614例,SM1癌142例)を用い,未分化型混在分化型胃癌の臨床病理学的特徴と転移を中心に検討を行った.756例のうち分化型混合型癌(以下混合型癌)は9.7%(73/756例)で,その85%(62/73例)が胃型粘液形質を有し,分化型純粋型癌(以下純粋型癌)や未分化型癌と比較しSM1癌(34.2%),リンパ管侵襲陽性(9.6%)の頻度が高く,腫瘍最大径の平均が大きい(39.0mm)傾向にあった.また混合型癌の転移率はM癌6.3%(3/48例),SM1癌12.0%(3/25例)といずれも未分化型癌と同様に高率で,そのrisk factorとして随伴潰瘍(6/6例)(p<0.05),大きい病変(平均67.2mm)(p<0.01),リンパ管侵襲(2/6例)(p<0.05)が挙げられた.しかし病変内における未分化型癌の占める割合と転移との間に相関はみられず,また腫瘍粘膜下層先進部のsm INFγ所見(sprouting陽性もしくは先進部組織型が未分化型)は混合型SM1癌に多くみられ,リンパ管侵襲を高頻度に認めるが,リンパ節転移のrisk factorとは言えなかった.分化型癌484例(M癌387例,SM1癌97例)における深達度,組織型,随伴潰瘍,大きさ,リンパ管侵襲とリンパ節転移の検討では,大きさが20mm以下なら深達度,組織型,潰瘍の有無にかかわらず転移はなかったが,潰瘍を合併した混合型M癌は30mmから,SM1癌では23mmから転移がみられ,特に潰瘍およびリンパ管侵襲を伴う混合型SM1癌の転移率は50%(2/4例)と高率であった.以上より混合型M,SM1癌の治療は未分化型癌と同様の取り扱いも考慮する必要があると考える.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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