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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻11号

2007年10月発行

文献概要

今月の主題 ESD時代における未分化型混在早期胃癌の取り扱い 主題

未分化型混在早期胃癌の臨床的特徴と問題点―X線診断を中心に

著者: 長浜隆司1 中島寛隆1 石野淳1 吉田諭史1 馬場保昌1 丸山雅一1

所属機関: 1早期胃癌検診協会中央診療所

ページ範囲:P.1597 - P.1613

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要旨 未分化型混在早期胃癌48例についてX線診断を中心に臨床的特徴と問題点につき検討を行った.平均年齢は59.5歳(37~78歳),男女比は46:と男性に多く,病変の占居部位はU領域:6例,M領域:21例,L領域:21例,病変の存在する背景粘膜は胃底腺領域1例,中間帯領域27例,萎縮領域20例であった.①肉眼型は陥凹型が多く,隆起型を呈する症例では6例中4例が浸潤部にて未分化型が発現しており,粘膜内癌の2例は組織学的に胃型の分化型癌の症例であった.②基本的に優位な組織型に類似したX線所見を呈する.③分化型(tub1,tub2)優位の混在型においてporの混在は浸潤部での発現であることが多く,組織学的には分化型と未分化型は比較的境界を持って存在し,そのような症例のX線所見は比較的未分化型に類似した境界が明瞭な深い陥凹を呈することが多く,porの組織像が量的に少ない場合は線状の陰影斑を呈し,やや大きめの顆粒状構造が認められる傾向にあった.④sig優位の混在型においてはtub2の組織型との混合が多く,胃底腺領域内に発生したものはなかった.組織学的には同じ領域内での混在であり明瞭な境界を持ち組織型が分かれているものはなく,そのX線所見は比較的陰影斑は明瞭に描出されるが,典型的な未分化型癌のX線所見に比して陥凹面が浅く凹凸があまり目立たず微細~顆粒状粘膜を呈する傾向にあり,分化型との混合部分では境界が不明瞭になり,進展範囲がわかりにくいものであった.以上より未分化型混在早期胃癌の内視鏡治療を施行する際には臨床病理学的特徴を十分に理解し,術前の深達度診断,進展範囲診断を行う必要があると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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