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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻11号

2007年10月発行

文献概要

今月の主題 ESD時代における未分化型混在早期胃癌の取り扱い 主題

未分化型混在早期胃癌の臨床的特徴と問題点―通常内視鏡診断を中心に

著者: 松田彰郎1 西俣嘉人1 新原亨1 仁王辰幸1 島岡俊治1 鳥丸博光1 田代光太郎1 西俣寛人1 田中貞夫2 川井田浩一3 末永豊邦3 大井秀久4

所属機関: 1南風病院消化器科 2南風病院病理部病理科 3南風病院消化器外科 4今村病院消化器内科

ページ範囲:P.1615 - P.1624

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要旨 リンパ節転移の可能性が低い早期胃癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)が積極的に施行されるようになったが,未分化型混在早期胃癌に対する臨床的な対応は統一されていない.2001年4月から2007年4月までに南風病院で手術された胃粘膜内癌(主病変に限る)は171病変であった.内訳は分化型癌88病変,分化型癌と未分化型癌の混在型(未分化型混在癌)22病変,未分化型癌61病変であり,この中で未分化型混在癌22病変の形態的特徴を検討した.病変の大きさは1.3~9cmで平均3.8cmであった.肉眼型はすべて陥凹主体で潰瘍(瘢痕)の合併が11病変にみられた.術前の検査で潰瘍(瘢痕)を指摘していない病変が3病変存在した.内視鏡検査で病変の色調は,発赤調主体が8病変,褪色調主体が8病変,正色調主体が6病変であり,発赤調主体の病変は約1/3にとどまった.病変(陥凹面)の性状は胃小区類似の模様が10病変,大小顆粒状模様が11病変,胃小区が不明瞭化した平滑模様が1病変であり,分化型癌と未分化型癌の中間的な形態を呈していた.内視鏡検査で病変の境界がほぼ全周性に追えるものは8病変,半周以上追えるが全周性には追えないものは11病変,半周未満しか追えないものは3病変であり,境界不明瞭な病変が多かった.未分化型成分が領域をもつ病変では陥凹面に大小顆粒状の模様がみられ,未分化型成分の存在を推測可能なものが存在していた.しかしながら,未分化型成分が領域をもたず散在性に混在する病変では陥凹面の性状のみで未分化型成分の存在を指摘するのは困難であった.切除標本の病理組織学的検討が重要であり,現時点においては未分化型混在癌と診断された場合にはリンパ節転移の危険因子と考えて慎重に対応すべきである.

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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