食道扁平上皮dysplasiaの診断・取り扱い―内視鏡の立場から:ヨード・NBI観察
著者:
門馬久美子
,
吉田操
,
藤原純子
,
荒川丈夫
,
藤原崇
,
江頭秀人
,
江川直人
,
三浦昭順
,
加藤剛
,
出江洋介
,
根本哲生
,
船田信顕
,
葉梨智子
ページ範囲:P.147 - P.159
要旨 生検にてdysplasiaと診断されEMRを行った2例2病変と,EMR標本にてdysplasiaと診断された13例14病変を対象に,dysplasiaの内視鏡診断について検討した.15例は,内視鏡所見から,軽度隆起性病変,軽度陥凹性病変,平坦病変の3つに分類された.①軽度隆起性病変は,白色隆起6例,発赤隆起1例であった.全例表面に微細な凹凸を伴う丈の低い隆起であり,ヨード染色では,表面はヨードで淡染し,所々に濃染部を伴っていた.②軽度陥凹性病変は2例であり,通常観察では発赤陥凹,NBI観察ではIPCLの増生がない領域性のある茶褐色の粘膜として観察された.ヨード染色所見は2例とも異なり,表面が淡染し点状濃染を伴う1例,明らかな不染が1例であった.③平坦病変6例は,ヨード染色にて拾い上げられた.全例不整形のヨード不染であり,3例は不染内部に淡染部を有し,3例は淡染部と濃染部を伴っていた.6例中4例は,EMR標本でdysplasiaと診断された.生検にてdysplasiaと診断されEMRを行った2例は,EMR標本にて異型細胞は認めるが,腫瘍性か炎症性かの判断に迷う症例であり,atypical epitheliumと診断された.dysplasiaに対する臨床的取り扱いとして,①ヨード不染の形態から癌を疑う,あるいは,10mmを超える不染には,全生検目的にEMRを行う.②癌を疑う不染ではない,あるいは,大きさが10mm未満の場合は,3~6か月後に再検する.ヨード染色や生検は頻回に繰り返さず,拡大観察やNBI観察を行う.