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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻2号

2007年02月発行

文献概要

今月の主題 食道扁平上皮dysplasia―診断と取り扱いをめぐって 主題

食道扁平上皮dysplasiaの診断・取り扱い―内視鏡の立場から:ヨード・NBI観察

著者: 門馬久美子1 吉田操2 藤原純子1 荒川丈夫1 藤原崇3 江頭秀人3 江川直人3 三浦昭順4 加藤剛4 出江洋介4 根本哲生5 船田信顕5 葉梨智子6

所属機関: 1東京都立駒込病院内視鏡科 2東京都保健医療公社荏原病院 3東京都立駒込病院内科 4東京都立駒込病院外科 5東京都立駒込病院病理科 6東海大学東京病院外科

ページ範囲:P.147 - P.159

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要旨 生検にてdysplasiaと診断されEMRを行った2例2病変と,EMR標本にてdysplasiaと診断された13例14病変を対象に,dysplasiaの内視鏡診断について検討した.15例は,内視鏡所見から,軽度隆起性病変,軽度陥凹性病変,平坦病変の3つに分類された.①軽度隆起性病変は,白色隆起6例,発赤隆起1例であった.全例表面に微細な凹凸を伴う丈の低い隆起であり,ヨード染色では,表面はヨードで淡染し,所々に濃染部を伴っていた.②軽度陥凹性病変は2例であり,通常観察では発赤陥凹,NBI観察ではIPCLの増生がない領域性のある茶褐色の粘膜として観察された.ヨード染色所見は2例とも異なり,表面が淡染し点状濃染を伴う1例,明らかな不染が1例であった.③平坦病変6例は,ヨード染色にて拾い上げられた.全例不整形のヨード不染であり,3例は不染内部に淡染部を有し,3例は淡染部と濃染部を伴っていた.6例中4例は,EMR標本でdysplasiaと診断された.生検にてdysplasiaと診断されEMRを行った2例は,EMR標本にて異型細胞は認めるが,腫瘍性か炎症性かの判断に迷う症例であり,atypical epitheliumと診断された.dysplasiaに対する臨床的取り扱いとして,①ヨード不染の形態から癌を疑う,あるいは,10mmを超える不染には,全生検目的にEMRを行う.②癌を疑う不染ではない,あるいは,大きさが10mm未満の場合は,3~6か月後に再検する.ヨード染色や生検は頻回に繰り返さず,拡大観察やNBI観察を行う.

参考文献

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10) 大森泰,横山顕.危険なヨード不染帯所見 Pink Color sign の検討.Gastroenterol Endosc 43 : 1613, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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