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今月の主題 大腸鋸歯状病変の発育進展と診断・取り扱い 主題
大腸鋸歯状病変の臨床的取り扱い―私はこう考える
著者: 樫田博史1 工藤進英1 池原伸直1 浜谷茂治2
所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター 2昭和大学横浜市北部病院病理科
ページ範囲:P.326 - P.328
文献購入ページに移動大腸鋸歯状腺腫という用語が生まれてから15年が過ぎ,その概念もかなり定着したかに見える.一方で,いまだに組織診断基準が病理医によってかなり異なる領域でもある.最初の報告では担癌率が約10%とされ,通常の腺腫より高い癌化率であるとする報告が多かったため,一気に注目を集めるに至った.鋸歯状腺腫の発生母地としては,過形成性ポリープ由来という考え方と,そうではないとする考え方があり,その発生や変化に関して様々な推測がなされている.当初報告されていたほど高い癌化率とは思えないが,serrated adenoma-carcinoma sequenceが存在することは間違いなかろう.
通常,腺腫は将来癌化の可能性があるため治療の対象となるが,過形成性ポリープは非腫瘍であり治療の対象とはならない.ところが,hyperplastic polyposisにおいて高率に大腸癌が発生すること,明らかな癌の一部に鋸歯状構造を伴う病変が散見されること,鋸歯状構造を持った病変の中で比較的高率に遺伝子変化が認められること,などから,hyperplastic polyp-carcinoma sequenceの存在も否定できなくなってきた.さらにsessile serrated polyp,large hyperplastic polyp,mixed polypなど,中間的な病変の存在が提唱され,種々の呼称が存在し,概念の解釈や病理診断基準に混乱が生じている.
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