3. 箱根コンセンサス・工藤班会議の総括―VI pit patternの分析および診断に関するコンセンサス
著者:
工藤進英
,
小林泰俊
,
樫田博史
,
池原伸直
,
笹島圭太
,
林武雅
,
乾正幸
,
細谷寿久
,
若村邦彦
,
和田祥城
,
水野研一
,
工藤恵子
,
請川淳一
,
工藤由比
,
山村冬彦
,
大塚和朗
,
遠藤俊吾
,
石田文生
,
田中淳一
,
浜谷茂治
ページ範囲:P.898 - P.904
要旨 2002年からの厚生労働省がん研究助成金「大腸癌腫瘍性病変における腺口構造の診断学的意義の解明に関する研究」班(工藤班)を通じて,大腸癌のV型pit patternは概念の統一化と細分化がなされた.2004年,明らかな無構造領域を有するpit patternをVN型,不整腺管構造を有するpit patternをVI型とした箱根シンポジウムのコンセンサスが得られた.さらに,pitの内腔狭小,辺縁不整,輪郭不明瞭,stromal areaの染色性の低下・消失,scratch sign等の所見を参考にしてVI型高度不整は"既存のpit patternが破壊,荒廃したもの"と定義された.2001年4月から2006年4月までの当院におけるsm癌114病変のpit patternと粘膜筋板,desmoplastic reaction(DR)の検討によりVN型pit patternは全例sm深部浸潤癌であり,腫瘍表層部のDRを示している所見と考えられた.またVI高度不整の所見である内腔狭小や辺縁不整はsm深部浸潤癌の指標の1つと言える.V型pit pattenの分類により大腸腫瘍の内視鏡診断はよりいっそう簡便になり,大腸pit pattern診断は観察から治療方法が直結した診断学になった.