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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻5号

2007年04月発行

特集 消化管の拡大内視鏡観察2007

各論 1. 咽頭・食道

3) 食道扁平上皮癌の深達度診断

著者: 門馬久美子1 吉田操2 藤原純子1 江頭秀人3 江川直人3 三浦昭徳4 加藤剛4 出江洋介4 根本哲生5 船田信顕5

所属機関: 1都立駒込病院内視鏡科 2東京都保健医療公社荏原病院 3都立駒込病院内科 4都立駒込病院外科 5都立駒込病院病理科

ページ範囲:P.673 - P.682

文献概要

要旨 食道表在癌では,病変の肉眼所見と深達度,深達度と脈管侵襲・リンパ節転移頻度の間に密接な関係がある.深達度診断の目標は,①局所治療の適応であるT1a-EP~T1a-LPM癌,②10%程度にリンパ節転移を認め,局所治療の相対的適応とされるT1a-MM・SM1癌,③30~50%にリンパ節転移を認め,リンパ節郭清を含めた外科治療が標準治療となるSM2~3癌の3群に鑑別することである.内視鏡所見は,深達度が浅いほど凹凸は軽微であり,深達度が深くなるにつれ凹凸が明瞭になる.表在隆起型(0-I型)と表在陥凹型(0-III型)は粘膜下層癌,表面平坦型(0-II型)は粘膜癌の特徴を表現している.表面平坦型(0-II型)の中で0-IIa型,0-IIb型の大部分は粘膜癌であるが,0-IIc型は,T1a-EP~SM3までの症例が含まれる.深達度診断のための観察ポイントは,①病変内および病変周囲の凹凸の程度,②伸展による病変の形態変化,③病変内への縦ひだの入り方,④病変内への畳目模様(輪状ひだ)の入り方,⑤蠕動による病変の動き,⑥拡大観察による表層の血管模様,⑦二重染色の染色所見などである.拡大観察では,微細血管パターンを観察し,配列の乱れや口径不同を示す血管か,あるいは,乳頭から逸脱した多重状,不整樹枝状,網状の血管変化がみられるか,また,T1a-LPM以深の癌では,肥厚した血管に乏しい領域(avasculararea;AVA)を取り囲む変化がみられ,AVAの大きさからも深達度が分類されている.粘膜面に変化を及ぼす病変であれば,内視鏡で診断することが可能であるが,正常構造を破壊しない浸潤や表面を再生上皮が覆う場合,あるいは,表面の浅い癌と連続性がない浸潤部分を有する癌の場合は診断困難である.

参考文献

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8) 吉田操,門馬久美子,葉梨智子.早期食道癌の内視鏡治療.消化器病セミナー 78:59-67,2000
9) 有馬美和子,有馬秀明,多田正弘.表在食道癌の微細血管像による深達度診断.消化器内視鏡 17:2076-2083,2005
10) 井上晴洋,佐藤嘉高,工藤進英.NBI 画像による咽頭・食道扁平上皮領域における内視鏡的異型度診断・内視鏡的深達度診断― IPCL パターン分類.田尻久雄(編).特殊光による内視鏡アトラス― NBI・AFI・IRI 診断の最前線.日本メディカルセンター,pp36-49,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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