胃と腸42巻5号

2007年04月発行

特集 消化管の拡大内視鏡観察2007

各論 3. 十二指腸・小腸

1) 十二指腸疾患の拡大内視鏡診断

著者： 稲土修嗣¹ 圓谷朗雄¹ 品川和子¹ 梶浦新也¹ 金辰彦¹ 岡田和彦¹ 前田宜延²

所属機関： ¹富山赤十字病院消化器科 ²富山赤十字病院病理

ページ範囲：P.753 - P.761

文献概要

要旨　十二指腸における拡大内視鏡観察は最近では容易に可能となった．しかしながらその臨床的有用性はいまだに確立されていない．現時点で考えられる拡大観察の意義として以下のものが挙げられる．①腫瘍（上皮性・非上皮性腫瘍）と非腫瘍の鑑別，②腫瘍性病変：良悪性の鑑別（腺腫と癌の鑑別）や質的診断，③ESDなど内視鏡治療を視野に入れた診断，④十二指腸潰瘍：Helicobacter pylori感染との関連性からの病態解明と治療指針への応用，⑤びまん性炎症性疾患：十二指腸炎やCrohn病などの病態解明．今後はより臨床的有用性にポイントを絞った多くの知見を集積することが急務である．

参考文献

1) 稲土修嗣．十二指腸における拡大内視鏡観察．田尻久雄，田中信治(編)．消化管拡大内視鏡観察の実際．金原出版，2004

2) 田中三千雄，薄田勝男，大倉康男，他．十二指腸における隆起性病変の拡大観察とその診断学的意義．胃と腸 38:1709-1720,2003

3) 山崎健路，荒木寛司，大島靖広，他．十二指腸陥凹型腺腫の1例．Gastroenterol Endosc 48:1228-1232,2006

4) 藤澤貴史，友藤善信，黒田信稔，他．腺管絨毛腺腫を伴う早期十二指腸癌の1例―本邦報告例249例の臨床病理学的検討．Gastroenterol Endosc 37:2768-2780,1995

5) 加藤洋，久保起与子，柳澤昭夫．小腸と胃・大腸の内視鏡治療の違い―病理の立場から．消化器内視鏡 10:1125-1132,1998

6) 川元健二，牛尾恭輔，井野彰治，他．腫瘍性，腫瘍様十二指腸小病変の診断．胃と腸 36:1507-1527,2001

7) 榊信廣，竹本忠良．十二指腸潰瘍の時相分類に関する内視鏡的研究．Gastroenterol Endosc 30:1914-1919,1988

8) 稲土修嗣．十二指腸における拡大内視鏡．消化器内視鏡 13:362-370,2001

9) 稲土修嗣．十二指腸潰瘍の病態解明のための内視鏡診断．消化器内視鏡 9:493-499,1997

10) 森隆太郎，小金井一隆，森英理，他．胃十二指腸に限局したクローン病の1例．Gastroenterol Endosc 47:2153-2158,2005

11) 稲土修嗣，田中三千雄，佐々木博．内視鏡分類にもとづく十二指腸炎の機能的ならびに形態学的研究．Gastroenterol Endosc 29:492-503,1987

12) 稲土修嗣．十二指腸の非腫瘍性びまん性病変の診断―非特異性十二指腸炎．胃と腸 37:773-780,2002

13) 山下克子，重本六男，秋本真寿美，他．胃腺窩上皮(胃上皮化生)．胃と腸 24:1275-1280,1989

14) 稲土修嗣，田中三千雄，佐々木博．484例の十二指腸炎における臨床的検討．消化器内視鏡 3:403-412,1989

15) 稲土修嗣，田中三千雄，渡辺明治．随伴性十二指腸炎．消化器科 12:277-284,1990