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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻7号

2007年06月発行

文献概要

今月の主題 大腸ESDの現況と将来展望 主題

大腸腫瘍性病変の臨床病理学的特性からみた内視鏡治療の適応と実際―スネアEMRの観点から

著者: 山野泰穂1 黒田浩平1 吉川健二郎1 佐藤健太郎1 木村友昭1 原田英嗣1 乾正幸1

所属機関: 1秋田赤十字病院消化器病センター

ページ範囲:P.1053 - P.1059

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要旨 大腸腫瘍性病変に対する内視鏡治療は,内視鏡的粘膜切除術(EMR)が主流で,最近では腫瘍径が大きな病変に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が大腸にも適用されつつあるが,治療適応としての病変の臨床病理学的特性を理解することが重要である.当センターにて経験した大腸腺腫・早期癌7,909病変において,腫瘍径20mm以上の病変が占める割合は5.1%に過ぎず,LSTを含む平坦型病変が主体で,担癌率は44.5%,sm癌率は16.1%であった.LSTに対する治療法の検討では20mm以下の病変ではEMRが行われていたが,25~29mmではEPMR,30mm以上では外科的切除がなされ,スネアによる一括切除の限界は20mm以下と判断した.LSTを4つに亜分類した臨床病理学的検討では腫瘍径の増大に比例して担癌率・SM癌率が上昇したが,特にG-M群とNG-PD群では腫瘍径20mm以上の悪性度が非常に高かった.またLSTにおけるSM深部浸潤癌は61.8%と腫瘍径とは無関係に高く,脈管侵襲率も67.6%と高かった.以上よりスネアによるEMR一括切除の限界は20mmにあるが,それ以上の腫瘍径の病変に対する内視鏡治療の適応を考えた場合,SM癌率,SM深部浸潤癌率,脈管侵襲率の検討より内視鏡治療だけでは完結しえない可能性が高いと結論し,病理学的評価が正確にできる切除の必要性が求められる.

参考文献

1) 工藤進英.側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)について.早期大腸癌 2:477-481,1998
2) 山野泰穂,松下弘雄,黒田浩平,他.いわゆる側方発育型大腸腫瘍における治療法の選択のための質的診断―内視鏡診断(拡大内視鏡を中心に).胃と腸 40:1759-1769,2005
3) 黒田浩平,山野泰穂,佐藤健太郎,他.LST の診断と治療(1)LST の臨床病理学的特徴と治療法の選択.早期大腸癌 10:389-394,2006
4) 大腸癌研究会(編).大腸癌治療ガイドライン―医師用2005年版.金原出版,2005
5) 池上雅博,劉鉄成,山下伸子,他.大腸 sm 癌における転移と脈管侵襲との関係および脈管侵襲の病理組織診断上の問題点.早期大腸癌 5:449-457,2001
6) 大倉康男,知念克也.大腸 sm 癌の組織型と脈管侵襲・リンパ節転移.早期大腸癌 5:459-464,2001
7) 田中信治,岡志郎,金尾浩幸,他.腫瘍特性からみた側方発育型大腸腫瘍の治療.胃と腸 40:1790-1805,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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