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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻7号

2007年06月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

粘膜筋板のびまん性破壊を認めた直腸IIa+IIc型SM1癌の1例

著者: 岡志郎1 田中信治1 河村徹1 金子巌2 毛利律生2 吉岡京子2 金尾浩幸2 島本大2 福本晃2 吉田成人1 吉原正治3 茶山一彰2

所属機関: 1広島大学病院光学医療診療部 2広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子病態制御内科学 3広島大学大学院医歯薬学総合研究科保健管理センター

ページ範囲:P.1157 - P.1164

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要旨 症例は73歳,女性.下痢,体重減少を主訴に当科を受診した.大腸内視鏡検査にて,下部直腸(肛門歯状線からの距離は約3cm)に最大径約20mm大のIIa+IIc型病変を認めた.空気の出し入れにより腫瘍の形態は変化し,拡大観察では陥凹部でVI型pit pattern,辺縁部でIIIL型pit pattenであった.超音波内視鏡検査では,病変部は第2層の肥厚像として認められ,第2層と第3層の境界エコーはやや不整であったが,第3層はほぼ保たれていた.以上より,深達度M~SM1癌と診断し,診断的治療目的にて内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した.病理組織学的には,高異型度の高分化腺癌であった.粘膜筋板は,陥凹中心部においてdesmin染色ではわずかな破片状の筋線維として認識できる部分もあったが,大部分で同定不能であり表層部からSM浸潤距離を測定し,SM浸潤実測値1,100μmと診断した.脈管侵襲は認めなかった.本例は,高異型度癌が粘膜内で浸潤性に発育し,びまん性に粘膜筋板を破壊した病変と考えられた.

参考文献

1) 大腸癌研究会(編).大腸癌治療ガイドライン,1版.金原出版,2005
2) 田中信治,工藤進英,鶴田修.早期大腸癌内視鏡治療ガイドライン.日本消化器内視鏡学会(監).消化器内視鏡ガイドライン,3版.医学書院,pp284-298,2006
3) 蓮田究,角川康夫,藤井隆広,他.IIa+IIc 型微小浸潤癌でリンパ節転移再発を呈した1例.早期大腸癌 7:351-355,2003
4) 岡志郎,田中信治,金子巌,他.大腸 sm 癌における浸潤度の臨床診断―拡大内視鏡診断を中心に.胃と腸 39:1363-1373,2004
5) 岡志郎,田中信治,金子巌,他.大腸病変 : 術前精査と ESD 症例の選択.消化器内視鏡 18:217-225,2006
6) 田中信治,岡志郎,金尾浩幸,他.腫瘍特性からみた側方発育型大腸腫瘍の治療―分割 EMR と ESD の位置づけ.胃と腸 40:1790-1805,2005
7) 工藤進英,曽我淳,下田聰,他.大腸 sm 癌の sm 浸潤の分析と治療方針―sm 癌浸潤度分類について.胃と腸 19:1349-1357,1984
8) 山野泰穂,工藤進英,今井靖.転移(リンパ節,遠隔転移)からみた適応と限界(2)sm 浸潤度分類からみた EMR の適応と限界.早期大腸癌 2:663-668,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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