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書評「臨床と病理よりみた膵癌類似病変アトラスCD-ROM付」
著者:
船越顕博123
所属機関:
1第38回日本膵臓学会大会
2日本膵臓学会
3国立病院機構九州がんセンター消化器内科
ページ範囲:P.1224 - P.1224
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膵癌は早期発見が困難で「21世紀に残された消化器癌」とも呼ばれている.しかも,予後不良な"膵癌"の診断法について詳細かつ正確にわかりやすく説明することは大変困難である.一方,厚生労働省研究班や各学会による癌の診療ガイドラインが最近続々と作成されている.しかし,これまで国内には,膵癌診療の全領域に関する科学的根拠に基づいた診療ガイドラインは存在しなかった.日本膵臓学会が,膵癌診療ガイドライン作成小委員会を設けて作成にあたり,2006年3月に『科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2006年版』(金原出版)を発行した.本ガイドラインでは,対象を"膵癌"診療にあたる臨床医とし,一般臨床医に効率的かつ適切に対処できるよう配慮されている.さらに,患者さんや御家族など一般市民の方が"膵癌"への理解を深め,医療従事者と患者側の相互が納得したうえで医療が選択され実行されることも意図されている.しかしながら,このガイドラインをもってしても膵癌の早期診断にはほど遠い現状である.
膵癌診断の現場では画像診断で膵癌との鑑別診断に迷う腫瘍様病変を体系的にまとめたアトラスは少ないと思われる.九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科の山口幸二先生,田中雅夫先生による『臨床と病理よりみた膵癌類似病変アトラス』を活用することにより,前回上梓された『小膵癌アトラス』の姉妹版として(著者らも序文で記載しているように),小膵癌を含めた膵癌診断の一助となるものと思われる.