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文献詳細

雑誌文献

胃と腸42巻9号

2007年08月発行

文献概要

今月の主題 食道表在癌内視鏡切除後の長期成績 主題

食道m3・sm1癌内視鏡切除後の経過

著者: 有馬美和子1 有馬秀明2 多田正弘1

所属機関: 1埼玉県立がんセンター消化器内科 2有馬外科胃腸科

ページ範囲:P.1331 - P.1340

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要旨 EMRを施行した食道m3・sm1癌46例50病巣を対象として,局所再発や多発癌の頻度,リンパ節転移・再発の診断精度と治療について検討した.局所再発は4病巣(8.0%)に認め,高度なまだら不染の症例や,食道裂孔ヘルニアがない腹部食道の症例に多かった.多発癌は13例(28%)に認められ,全例EMRで治療した.主病巣および多発病巣を含め,局所コントロールが不能な症例はなかった.46例中4例(8.7%)にリンパ節転移,再発が明らかとなっている.これまでのところ原病死はないが,リンパ節転移例を厳密に事前に振り分けることは困難であり,経過観察に重点を置く必要がある.経過観察は6か月ごとに通常内視鏡,EUS,CT,頸部・腹部USをセットにして行うのが効果的で,早期診断を目指すならばEUSは必須である.EMR単独治療例の重点経過観察期間は1年6か月で,CRT追加例では再発時期が遅くなる傾向があるため4年以上の経過観察が必要である.これまでの経験から転移リンパ節は,画像診断で検出可能な大きさになると急速に増大する傾向がある.早期診断のためには,気になるリンパ節が描出されたら経過観察の間隔を3~4か月にせばめ,経時的変化を捉えることが重要である.

参考文献

1)幕内博康,島田英雄,千野修,他.食道m3・sm1癌の治療成績.胃と腸 37:53-63, 2002
2)島田英雄,幕内博康,千野修,他.食道sm癌に対する食道温存治療の可能性.胃と腸 37:1273-1284, 2002
3)藤田昌宏,安部達也,細川正夫,他.食道粘膜下層癌の病態―病理学の立場から.胃と腸 37:1263-1272, 2002
4)小山恒男,宮田佳典,島谷茂樹,他.第46回食道色素研究会アンケート調査報告―転移のあったm3,sm1食道癌の特徴.胃と腸 37:71-74, 2002
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6)有馬美和子,有馬秀明,多田正弘.表在食道癌の微細血管像による深達度診断.消化器内視鏡 17:2076-2083, 2005
7)島田英雄,幕内博康,千野修,他.治療成績からみた食道m3・sm癌の治療方針.胃と腸 41:1429-1440, 2006
8)有馬美和子,多田正弘,大倉康男.食道癌の病期診断におけるEUSの精度.消化器内視鏡 14:573-581, 2002
9)有馬美和子,多田正弘,有馬秀明,他.超音波内視鏡による食道m3・sm癌の深達度・リンパ節転移・再発深達度の精度.胃と腸 41:1386-1396, 2006
10)有馬美和子.縦隔リンパ節に対する食道EUS下穿刺.消化器内視鏡 12:726-727, 2000
11)有馬美和子,多田正弘.縦隔疾患に対するEUS-FNAB診断.消化器内視鏡 19:975-983, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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