当院における早期胃癌に対するESDの現状―適応拡大病変の切除成績と非一括完全切除となる要因の解析
著者:
長浜孝
,
宗祐人
,
頼岡誠
,
深水理恵子
,
古川敬一
,
宇野博之
,
古賀有希
,
平井郁仁
,
八尾建史
,
高木靖寛
,
槙信一朗
,
久部高司
,
津田純郎
,
松井敏幸
,
田邉寛
,
西俣伸亮
,
原岡誠司
,
岩下明徳
ページ範囲:P.61 - P.73
要旨 当院および関連施設でESDを施行した早期胃癌583病変を対象とし,①術前診断をもとに推定されたガイドライン病変(cGL)と適応拡大病変(cEXT)の根治切除(CR)率と非CRの要因を比較,②病理組織学的診断をもとに分類された適応基準病変別(pGL,pEXT,pEXC)に一括完全切除(ECR)率を比較,さらに非ECRの要因を解析した.①CR率の比較ではcEXTで78.9%,cGLで89.2%であり前者が有意に低かった(p=0.0007).非CRと判定された要因を両群で比較した結果,臨床診断的要因,切除技術的要因に差は認めず,病理組織学的要因(≧31mm,SM1・脈管侵襲陽性)がcEXTに高頻度であった(p=0.01).②ECR率はpGLで94.1%,pEXTで91.3%で両者に差はなかったが,適応外病変(pEXC)で72.9%と前2者と比較して有意に低かった(p=0.0003,p=0.0004).穿孔の頻度もpEXCが2者と比較して高い傾向にあった(p=0.09).非ECR(55病変)の要因について多変量解析を行った結果,深達度SM2,術中偶発症あり,腫瘍径≧31mmが有意な危険因子で,発生部位L領域,ESD施行時間<3時間が有意な非危険因子であった.以上の成績より,現状の適応拡大基準は切除技術的に妥当な基準と言えるが,さらなる根治性の向上には非L領域,腫瘍径31mm以上の病変のECR率の向上と術中偶発症に対する対策が必要である.