icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻1号

2008年01月発行

今月の主題 早期胃癌ESD―適応拡大を求めて

主題

早期胃癌ESD適応拡大病変に対する不完全切除例の検討

著者: 三島利之1 三宅直人1 長南明道1 中堀昌人1 石橋潤一1 松田知己1 高林広明1 羽根田晃1 濱本英剛1 水野浩志1 宮下祐介1 李仁1 岩間憲行2 望月福治3

所属機関: 1仙台厚生病院消化器内視鏡センター 2仙台厚生病院臨床検査センター病理部 3仙台厚生病院健康管理センター

ページ範囲:P.33 - P.43

文献概要

要旨 内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)における適応拡大病変の不完全切除例について,その要因を分析し,対策について考察した.適応拡大病変は,潰瘍を伴わない大きさ21mm以上の分化型M癌,潰瘍を伴う大きさ30mm以下のM癌,大きさ30mm以下の分化型SM1癌,潰瘍を伴わない大きさ20mm以下の未分化型M癌とし,この適応拡大に相当する148病変を対象とした.これらを完全切除群と不完全切除群に分け,肉眼型,部位,大きさ,スネアリング併用の有無,使用した内視鏡機種について比較検討した.また不完全切除群については,その要因についても検討した.完全切除率は90.5%であった.両群の比較では,肉眼型,部位,スネアリング併用に有意差は認めず,腫瘍径,M-scopeの使用率は有意差を認めた.肉眼型に有意差はないが,潰瘍瘢痕合併例は注意が必要である.不完全切除の理由としては,全14病変のうち,範囲診断不一致が4病変(28.6%),剥離不十分な状態でのスネアリングが4病変(28.6%),術中出血コントロール困難によりスネアリングに切り替えたものが3病変(21.4%),熱変性のため水平断端の病理組織学的検索が不能であったものが3病変(21.4%),術中穿孔のためスネアリングに切り替えたものが1病変(7.1%)であった(重複あり).送水機能を持ち,multi-bending機能を備えた2チャンネルスコープ(M-scope)は,切除困難部位での操作,術中出血への対処などに有用であり,完全切除率の向上に寄与する可能性が示唆された.また早期胃癌の中には粘膜内浸潤範囲診断の困難な症例が存在するため,完全切除率向上には,従来の内視鏡診断に加えて1.5%酢酸撒布併用を含む拡大内視鏡や狭帯域フィルター内視鏡(narrowband imaging;NBI)システムの併用が浸潤範囲診断不一致例の減少に寄与することが期待された.

参考文献

1) 日本胃癌学会(編).胃癌治療ガイドライン,2版.金原出版,2004
2) 小山恒男,田中雅樹,友利彰寿,他.早期胃癌に対するESD治療の予後―術後3年以上の成績.胃と腸 41:87-90, 2006
3) 池原久朝,後藤田卓志,小田一郎,他.早期胃癌ESD後の長期経過の検討.胃と腸 41:91-98, 2006
4) 小野裕之,乾哲也,蓮池典明,他.早期胃癌に対するESD切除成績と切除困難例の特徴.胃と腸 41:37-44, 2006
5) 田邉寛,岩下明徳,原岡誠司,他.病理学的にみた早期胃癌に対するESD切除成績と範囲診断困難例の特徴―一括完全切除例と分割切除例の対比を含めて.胃と腸 41:53-66, 2006
6) 小山恒男,平澤大,菊池勇一,他.早期胃癌に対する切開・剥離術の治療成績と問題点.胃と腸 39:35-38, 2004
7) 貝瀬満,山崎琢士,仲吉隆,他.早期胃癌に対するESD切除成績と切除困難例の特徴.胃と腸 41:45-51, 2006
8) 蓮池典明,小野裕之,乾哲也,他.瘢痕症例への対処法.消化器内視鏡 18:203-207, 2006
9) 豊永高史,西野栄世,廣岡大司,他.胃体部大彎病変の克復.消化器内視鏡 18:209-216, 2006
10) 和田則仁,熊井浩一郎,才川義朗,他.R-scopeを用いた胃ESD.消化器内視鏡 19:657-661, 2007
11) 田辺聡,佐々木徹,樋口勝彦,他.早期胃癌に対するESDによる偶発症の現状とその対策―全身管理,循環動態も含めて.胃と腸 41:67-74, 2006
12) 池原久朝,蓮池典明,小野裕之.ここまではやりたい偶発症への対処法.消化器内視鏡 19:745-751, 2007
13) 豊永高史,西野栄世,廣岡大司.胃ESDによる偶発症の現状とその対策―剥離深度の重要性と手技の工夫.胃と腸 41:75-85, 2006
14) 赤松泰次,横澤秀一,金子靖典,他.続行か,勇気ある撤退か?─ESD実施時の基本姿勢.消化器内視鏡 18:147-153, 2006
15) 三島利之,長南明道,安藤正夫,他.内視鏡からみた平坦・陥凹型早期胃癌の粘膜内浸潤範囲診断.胃と腸 36:1249-1256, 2001
16) 八尾恒良,溝口幹郎,岡田光男,他.早期胃癌における内視鏡所見と切除標本所見との対比.胃と腸 23:55-66, 1988
17) 長南明道,望月福治,池田卓,他.平坦・陥凹型早期胃癌の口側浸潤範囲の内視鏡診断能の検討.Gastroenterol Endosc 34:775-783, 1992
18) 菅野聡,大井田正人,山縣さゆり,他.電子内視鏡による陥凹・平坦型早期胃癌の浸潤範囲診断の検討.Gastroenterol Endosc 39:650-658, 1997
19) 小山恒男,友利彰寿,堀田欣一,他.切開・剥離法(ESD)に必要な胃癌術前診断─内視鏡診断:側方進展診断を中心に─酢酸・拡大観察を含めて.胃と腸 40:761-768, 2005
20) 八木一芳,有賀諭生,中村厚夫,他.切開・剥離法(ESD)に必要な胃癌術前診断─新しい診断法:拡大内視鏡.胃と腸 40:791-799, 2005
21) 豊田英樹,田中匡介,斉藤知規,他.切開・剥離法(ESD)に必要な胃癌術前診断─新しい診断法:酢酸撒布.胃と腸 40:801-808, 2005
22) 炭山和毅,田尻久雄,貝瀬満,他.切開・剥離法(ESD)に必要な胃癌術前診断─新しい診断法:narrow band imaging(NBI).胃と腸 40:809-816, 2005
23) 赤松泰次,横澤秀一,金子靖典,他.ESDに求められる内視鏡診断学.消化器内視鏡 17:561-569, 2005
24) 小山恒男,友利彰寿,堀田欣一,他.ESDのためのこだわりの術前診断.消化器内視鏡 18:187-194, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら