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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻1号

2008年01月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌ESD―適応拡大を求めて 主題

当院における早期胃癌に対するESDの現状―適応拡大病変の切除成績と非一括完全切除となる要因の解析

著者: 長浜孝1 宗祐人2 頼岡誠3 深水理恵子3 古川敬一4 宇野博之4 古賀有希5 平井郁仁1 八尾建史1 高木靖寛1 槙信一朗1 久部高司1 津田純郎1 松井敏幸1 田邉寛6 西俣伸亮6 原岡誠司6 岩下明徳6

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器科 2戸畑共立病院内科 3佐田病院胃腸科 4福岡成人病センター消化器科 5国家公務員共済会新小倉病院消化器科 6福岡大学筑紫病院病理部

ページ範囲:P.61 - P.73

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要旨 当院および関連施設でESDを施行した早期胃癌583病変を対象とし,①術前診断をもとに推定されたガイドライン病変(cGL)と適応拡大病変(cEXT)の根治切除(CR)率と非CRの要因を比較,②病理組織学的診断をもとに分類された適応基準病変別(pGL,pEXT,pEXC)に一括完全切除(ECR)率を比較,さらに非ECRの要因を解析した.①CR率の比較ではcEXTで78.9%,cGLで89.2%であり前者が有意に低かった(p=0.0007).非CRと判定された要因を両群で比較した結果,臨床診断的要因,切除技術的要因に差は認めず,病理組織学的要因(≧31mm,SM1・脈管侵襲陽性)がcEXTに高頻度であった(p=0.01).②ECR率はpGLで94.1%,pEXTで91.3%で両者に差はなかったが,適応外病変(pEXC)で72.9%と前2者と比較して有意に低かった(p=0.0003,p=0.0004).穿孔の頻度もpEXCが2者と比較して高い傾向にあった(p=0.09).非ECR(55病変)の要因について多変量解析を行った結果,深達度SM2,術中偶発症あり,腫瘍径≧31mmが有意な危険因子で,発生部位L領域,ESD施行時間<3時間が有意な非危険因子であった.以上の成績より,現状の適応拡大基準は切除技術的に妥当な基準と言えるが,さらなる根治性の向上には非L領域,腫瘍径31mm以上の病変のECR率の向上と術中偶発症に対する対策が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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