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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻1号

2008年01月発行

早期胃癌研究会症例

癌性リンパ管症により周囲に特異な赤色・白色斑の集簇を認めた1型胃癌の1例

著者: 吉村大輔1 松本拓也2 中島明彦3 瀬川由美子4 八尾隆史4 井星陽一郎1 麻生暁1 落合利彰1 壁村哲平1 松浦弘2 中村和彦5

所属機関: 1済生会福岡総合病院内科 2済生会福岡総合病院外科 3済生会福岡総合病院病理部 4九州大学大学院医学研究院形態機能病理学 5九州大学大学院医学研究院病態制御内科学

ページ範囲:P.111 - P.117

文献概要

要旨 患者は70歳の女性.Parkinson病の治療中に小球性低色素性貧血を指摘され紹介受診した.上部消化管X線検査で胃体上部前壁小彎側に3cm大の立ち上がり急峻なやや丈の高い扁平隆起性病変を認め,表面は小結節状で隆起表面に不整形の淡い陥凹を伴った.また隆起性病変周囲の噴門部から胃体上部前壁にかけて,ほぼ均一な顆粒状の透亮像が集簇し,その境界は不明瞭であった.この顆粒集簇像は上部消化管内視鏡検査では白色調ないし赤色調の透過を有するなだらかな小隆起の集簇として認められた.扁平隆起性病変の生検から乳頭腺癌の所見が得られ,胃全摘術を施行した.切除標本の病理組織学的検索では,隆起性病変はそのほとんどが粘膜から粘膜下層深部にとどまり,一部が固有筋層表層へ浸潤した乳頭腺癌の所見であった.その周囲には白色調ないし褐色調の小隆起がうろこ状に集簇しており,組織学的には粘膜固有層および粘膜筋板直下の高度のリンパ管侵襲とその著明な拡張,およびリンパ管内出血の所見であった.リンパ管侵襲は固有筋層から漿膜下層へ及び,第2群リンパ節への転移陽性であった.癌性リンパ管症を合併した1型胃癌として特異な発育形式を来した1例と考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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