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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻10号

2008年09月発行

今月の主題 早期食道癌の診断─最近の進歩

主題

早期食道癌深達度診断の進歩―FICE併用拡大内視鏡を中心に

著者: 有馬美和子1 有馬秀明2 多田正弘1

所属機関: 1埼玉県立がんセンター消化器内科 2有馬外科胃腸科

ページ範囲:P.1489 - P.1498

文献概要

要旨 拡大内視鏡を用いた微細血管像による,食道表在癌の深達度診断の成績と問題点について検討した.使用機種は主にFTS社製EG-590ZWを用い,血管強調モードのFICEを併用した.微細血管パターンのtype 3とtype 4は癌に特徴的な血管像で,ストレッチされたtype 4血管で囲まれたAVA/SSIVは,その大きさから4S,4M,4Lの3つのカテゴリーに亜分類される.type 3とtype 4Sをm1・m2癌,type 4Mをm3・sm1癌,type 4Lをsm2・sm3癌の診断規準とすると,m1・m2癌の診断率は99.6%,m3・sm1癌は68.8%,sm2・sm3癌は85.3%,全体の正診率は377病巣中351病巣(93.1%)であった.AVAを形成しないreticularな血管から成るtype 4Rは,低分化型や特殊な組織型の癌,INFcの浸潤様式を示す病変でみられた.深達度診断で前進した点は,m1・m2癌の診断レベルが向上したこと,細かな浸潤部を読影できるようになったこと,癌の進展形態や浸潤様式が鑑別できるようになったことである.誤診の原因は微小浸潤,角化の強い病変や表層が浅い癌で覆われながら,深部で細かい癌蜂巣がバラバラに浸潤していたことによる浅読みであった.病変の厚みと血管像の間に乖離がある場合には,高周波数細径超音波プローブを併用した深達度評価が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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