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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻12号

2008年11月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌発育の新たな分析─内視鏡経過例の遡及的検討から 主題

内視鏡経過例における早期胃癌発育の遡及的検討―粘液形質からみて

著者: 入口陽介1 小田丈二1 水谷勝1 大野康寛1 高柳聡1 篠原知明1 富野泰弘1 岸大輔1 藤崎聡1 大村秀俊1 板橋浩一1 山田耕三1 中村尚志3 山村彰彦2 細井董三1

所属機関: 1東京都多摩がん検診センター消化器科 2東京都多摩がん検診センター検査科 3調布外科消化器科内科クリニック消化器科

ページ範囲:P.1752 - P.1763

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要旨 過去の内視鏡像の見直し診断で異常を指摘できた経過例121例を対象として,早期胃癌の発育進展を粘液形質の相違から解析した.粘液形質は,胃型46例,混合型32例,腸型42例,無形質型1例であった.症例の肉眼型は,表面型が117例とほとんどを占めていた.隆起型4例および表面隆起型33例の発育速度を腫瘍径で比較すると,混合型と胃型が腸型に比べて速く,その中で最も速かった症例は,約5年の経過で腫瘍径が約3倍となり,胃体部では経過中にSM浸潤を認めた症例もあった.表面陥凹型84例では,発育速度を深達度で比較すると,胃型と混合型は,組織型にかかわらず,2~4年の経過でSM浸潤癌となった症例が多かった.一方,腸型は,長期にわたって粘膜内癌のまま推移した症例が多かった.以上から,早期胃癌の発育速度を粘液形質から解析した結果,胃型と混合型の発育速度は類似しており,腸型に比較して速かった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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