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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻12号

2008年11月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌発育の新たな分析─内視鏡経過例の遡及的検討から 主題

病理学的に逆追跡可能な早期胃癌症例の解析―多施設症例の検討

著者: 三富弘之1 大倉康男2

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構相模原病院研究検査科病理 2杏林大学医学部病理学

ページ範囲:P.1784 - P.1797

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要旨 初回生検から切除まで1年以上経過観察された早期胃癌25例(27病変,9施設より提供)を低異型度胃型癌(LG-G)群(11病変),低異型度腸型癌(LG-I)群(8病変),高異型度癌(HG)群(8病変)に分類して解析し,以下の特徴を抽出した.(1)切除時年齢はLG-I群(切除時平均73歳),LG-G群(切除時平均69歳),HG群(切除時平均60歳)の順に高く,経過観察期間はLG-G群(平均41か月),LG-I群(平均36か月),HG群(平均27か月)の順に長かった.(2)3群とも胃中下部の陥凹(IIc)成分を有する病変が多く,大きさはLG-I群(平均16mm)が他の2群(LG-G:平均22mm,HG:平均23mm)に比べ小さかった.(3)LG-G群のみSM浸潤(6/11例)がみられたが,他の2群は全例Mであった.(4)経過観察中の組織(癌)異型度の増大はLG-G群SM浸潤3例,HG群1例のみに限られた.(5)生検回数はLG-G群(平均2.8回)とLG-I群(平均2.6回)はHG群(平均1.8回)よりも多かった.(6)見直し生検診断Group I~IVの頻度はLG-G 群(41%),LG-I群(31%),HG群(7%)の順に多かった.(7)LG-G・LG-I群では腫瘍表層のはく離や変性によりGroup IVとした例が半数以上あり,両群とも腫瘍採取量不足や標本作製時の問題も,Group V診断不能の要因となった.以上,病理医がLG-G,LG-Iの特徴を熟知して生検診断することと,生検で低異型度癌が疑われた際の臨床医との緊密な情報交換が重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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