胃と腸43巻12号

2008年11月発行

今月の主題 早期胃癌発育の新たな分析─内視鏡経過例の遡及的検討から

主題

早期胃癌の発育速度―内視鏡遡及例の全国集計

著者： 松井敏幸¹ 長浜孝¹ 長南明道² 今村哲理³ 小林広幸⁴ 芳野純治⁵ 飯田三雄⁶ 神津照雄⁷ 鶴田修⁸ 馬場保昌⁹ 野村昌史¹⁰ 平田一郎¹¹ 吉村平¹² 川口実¹³ 九嶋亮治¹⁴

所属機関： ¹福岡大学筑紫病院消化器科 ²仙台厚生病院消化器内視鏡センター ³札幌厚生病院胃腸科 ⁴松山赤十字病院胃腸センター ⁵藤田保健衛生大学第二教育病院内科 ⁶九州大学大学院病態機能内科学 ⁷千葉大学医学部光学医療診療部 ⁸久留米大学医学部消化器病センター ⁹早期胃癌検診協会中央診療所 ¹⁰手稲渓仁会病院消化器病センター ¹¹藤田保健衛生大学消化管内科 ¹²三重県立志摩病院内科 ¹³国際医療福祉大学熱海病院 ¹⁴滋賀医科大学付属病院病理部

ページ範囲：P.1798 - P.1809

文献概要

要旨　粘膜内（M）癌からSM塊状浸潤癌ないし進行癌に進展する過程を速度面から分析する目的で，多施設アンケート調査を行った．対象と方法：230例の早期胃癌の内視鏡追跡例（72％が遡及例）が解析された．初回観察時の推定深達度は，M癌211病変，SM癌19病変であった．初回M癌の肉眼型はIIcなどの陥凹型107病変，隆起型104病変であり，平均経過観察期間は33.6か月で，最終的には44病変が進展癌（SM塊状浸潤ないし進行癌）へと発育し，非進展癌は167病変であった．また，M癌の最終観察時の組織型は，分化型癌が176病変で未分化型癌が35病変であった．結果：（1）M癌から進展癌となる過程 ; 50％のM癌が進展癌へとなるのに91か月を要した．初回の深達度がMないしSMであった場合，50％が進行癌へと進展するまでの期間は111か月を要した．（2）発育に関与する因子 ; 性と腫瘍の存在部位は，発育速度に関与しなかった．組織型の検討では，未分化型癌は分化型癌よりhazard比2.48と有意（p＜0.01）に早く発育した．また，年齢が10歳高いと進展速度がhazard比1.34と有意（p＜0.05）に速かった．以上より，遡及例を中心としたM癌は，内視鏡治療の適応を越える深達度に達するのに約7年を要し，早期癌が進行癌になるには9年を要すると考えられ，分化度が低いことと年齢が高いことが発育速度に影響していた．また，SM浸潤癌の発育速度はM癌に比し速かった．

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