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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻5号

2008年04月発行

今月の主題 linitis plastica型胃癌―病態と診断・治療の最前線

主題

linitis plastica型胃癌の自然史

著者: 入口陽介1 細井董三1 小田丈二1 水谷勝1 大野康寛1 篠原知明1 高柳聡1 冨野泰弘1 岸大輔1 大村秀俊1 霧生信昭1 細井亜希子1 藤崎聡1 板橋浩一1 高倉裕一1 大浦通久1 山田耕三1 中村尚志2 中橋栄太3 山村彰彦4

所属機関: 1東京都多摩がん検診センター消化器科 2調布外科消化器科内科クリニック 3横浜菊名記念病院消化器科 4東京都多摩がん検診センター検査科

ページ範囲:P.751 - P.763

文献概要

要旨 linitis plastica(以下,LP)型胃癌の自然史について,原発巣の形態学的・病理組織学的分析とX線学的遡及例をもとに検討した.LP型49例を原発巣の性状から,原発巣が胃底腺領域に発生した胃底腺領域型19例と腺境界部に発生した腺境界領域型20例に大別した.前者の原発巣は,大きさが25mm以下で陥凹は深く,組織型はすべて未分化型腺癌であった.これに対して後者の原発巣は,大きさが50mm以上で陥凹は浅く,組織型は未分化型腺癌が多かったが,なかには中~高分化型腺癌と未分化型腺癌との組織混在型を示すものがあり,20例中5例に認めた.この結果から,腺境界領域に発生した組織混在型胃癌のうち一部は,LP型胃癌に類似した発育進展形式をとることが推測された.X線的遡及例からは,typical LPは,胃体部の管状狭窄と特徴的な悪性レリーフを呈し癌浸潤が漿膜面に露出していた.その1年前は,ひだの肥大は広範囲に及んでいたが,胃壁の伸展障害は局所的であり,latent LPの状態を呈していた.typical LPが形成される少なくとも3年以上前のX線像では,原発巣の陰影斑は,ひだ集中を伴わないⅡc様の所見として現れており,その時点では深達度はm~smと推定された.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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