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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻5号

2008年04月発行

今月の主題 linitis plastica型胃癌―病態と診断・治療の最前線

主題

linitis plastica型胃癌,特にその初期病変の診断―X線診断を中心に

著者: 松田彰郎1 西俣嘉人1 島岡俊治1 鳥丸博光1 田代光太郎1 仁王辰幸1 新原亨1 西俣寛人1 田中貞夫2 川井田浩一3 末永豊邦3 大井秀久4 今村健三郎5

所属機関: 1南風病院消化器科 2南風病院病理科 3南風病院消化器外科 4今村病院消化器内科 5健三郎今村クリニック

ページ範囲:P.786 - P.798

文献概要

要旨 linitis plastica型胃癌の診断能を向上させる目的で胃体部と胃底部に発生した未分化型癌のX線所見を検討した.早期癌68病変(M癌39病変,SM癌29病変)の肉眼型はすべて陥凹主体の病変であった.その中で潰瘍や皺襞集中を伴う病変は37病変(54%)であった.陥凹面の性状は大小顆粒状模様が55病変,胃小区模様が消失した平滑模様が7病変,胃小区類似(Ⅱb類似)の模様が6病変であった.胃小区模様が消失した平滑模様7病変中5病変はSM癌であり,胃小区類似の模様の病変はすべてM癌であった.また,陥凹周囲に透亮像を伴う15病変はすべてSM癌であった.4型進行胃癌26病変の中で原発巣に皺襞集中がない病変は19病変(73%)であった.また,原発巣が胃体部の皺襞の中に存在するものは12病変(46%)であった.胃体部の皺襞に存在し皺襞集中がない早期胃癌の発見が重要と考えられ,それらのX線像は皺襞を横断する溝状陰影,皺襞の中断,皺襞の中断を伴うバリウム陰影,皺襞間のバリウム陰影であった.4型進行胃癌の中で胃の全体的な収縮が生じていない潜在的linitis plastica型胃癌6病変のX線所見は,胃角もしくはHis角の変形が3病変,辺縁の硬化像が2病変,皺襞の肥大が2病変,皺襞間の狭小化が2病変,皺襞表面の顆粒像が4病変,胃小区の不規則な強調像が5病変であった(重複あり).潜在的なLP型胃癌の診断は伸展不良の所見が不明瞭であるため,粘膜ひだや粘膜模様の微細な変化を表すX線検査が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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